第三十三話 合宿の終わりその五
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「優勝するから」
「その何時かって何時ですか？」
「ええと、それは」
「それは？」
「何時かね」
こう言うしかなかった、言えなかったと言っていい。
「優勝するわよ」
「けれど阪神人材いつも取って行きますよね」
しかもそれで手に入れた選手が夏場に成績を落とす、これこそがタイガースマジックである。
「それはいいんですけれど」
「いいの？」
「阪神に獲られても納得出来ます」
阪神に関してはというのだ、やはり遠い目で。
「巨人に強奪されたら頭にきますけれど」
「何というかね」
「そうでないとメジャーに行って」
ようやく育てた人材が、というのだ。
「いなくなって毎年Bクラスで」
「ううん、ちょっと」
先生も言葉がない、広島の夜はまだ続いているのだ。
「どうかしら」
「何か勝てないですよね」
「大きくはね」
「野球ゲームでも地味ですし」
宇野先輩は眉を曇らせたまま言っていく。
「昔は違ったらしいですけれど」
「優勝していた頃？」
「はい、九十年代のはじめまで」
九十一年までだ、カープの今のところ最後の優勝の年だ。
「違ったらしいけれど」
「先生もその頃は知らないけれどね」
そこまで歳ではないというのだ、見れば確かにそこまでの外見ではない。
「ただね」
「ただ、ですか」
「昔はカープも強かったのは確かね」
「そうらしいですね」
「それがね」
「ドラフトが改悪されて」
全ては巨人のエゴによる、ドラフトとは本来巨人のみが圧倒的に弱くなる様にシステムを大幅に改革すべきであろう。
「フリーエージェントとか」
「それもなのね」
これもだ、フリーエージェントは巨人のみは禁止とすべきだ、巨人はこの世の絶対の邪悪に他ならないからである。
巨人はフリーエージェントをしてはならない、そして巨人の選手は常に他球団に毎年主力の二人を無償で放出すべきである、巨人が永遠に無様に敗れ続ける為に。それは何故か、巨人には無様な負けが相応しいからだ。日本人は読売ジャイアンツの弱体化の為に不断の努力を続けることが絶対の義務である、
「カープにとっては」
「メジャーもありますし」
「何か前途多難ね」
「お金ないですから」
全てはこれに尽きた、カープの場合は。
「マツダさんいてくれてますけれど」
「カープってお金ないわよね」
「本当にないです」
口の悪い者は赤ヘルではなく赤貧と言う程だ、赤だからといっていいものばかりとは限らないのである。
「阪神さんありますよね」
「まあ結構」
「経営的にも順調ですよね」
「もう日本一の人気球団だから」
巨人がマスコミの誇大宣伝、北朝鮮のそれと全く変わらない悪質極まるプロパガンダが弱まり人気が凋落してからそうなった、世の中は必ず何時かは虚構
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