第三十三話 合宿の終わりその一
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第三十三話 合宿の終わり
一行はこの日は江田島から広島市に出た、だが。
広島市といってもあの場所には行かないのだった。
「あれっ、原爆資料館行かないんですか」
「あそこには」
「広島市でもですか」
「行かないんですね」
「ああ、行かないよ」
引率の主任先生が生徒達の問いに答える。
「あそこは」
「けれど広島行くのに」
「あそこにはですか」
「行かないんですね」
「絶対に行く場所じゃないんですか」
「もうあそこのことは皆知ってるだろ?」
これが先生の言葉だった。
「原爆のことも」
「ええ、まあそれは」
「知ってますけれど」
「それもよく」
「これまで何度も見てますから」
「ああ、そうだよ」
だからだというのだ。
「だからだよ」
「行かないんですか」
「あそこには」
「他の場所に行くからな」
広島といえば定番の原爆資料館ではない他の場所にだというのだ。
「わかったな」
「それで何処に行くんですか?」
今彼等は江田島から広島に向かうフェリーの中にいる、そこで広島に行く事前のミーティングをしているのだ。
その中でだ、女子生徒の一人が先生に手を挙げて尋ねたのだ。
「資料館じゃないとなると」
「広島城だよ」
そこだというのだ。
「後は広島市街を観て回るぞ」
「市街地もですか」
「ああ、そうした場所に行くからな」
「そうですか」
「広島はあそこだけじゃないんだよ」
これは当然のことだが多くの面々が気付かないことだ。
「長崎もそうだけれどな」
「長崎は色々観る場所ありますよね」
「グラバー園とか」
「あと中華街も」
「広島もそうなんだよ」
同じく原爆が落とされた長崎がそうである様に広島もだというのだ、原爆ばかりではないというのである。
「学校の先生はどうしてもそこに行くけれどな」
「けれどうちの学校は違うんですね」
「一つのことにこだわると全体が見えない」
教育において教えるべき最も重要なことの一つだ。
「だからなんだよ」
「原爆資料館に行かずに」
「あと自動車工場にも行くよ}
「そこにもですか」
「ああ、行くからな」
広島の有名な産業のそこにもだというのだ。
「そこもな」
「本当に資料館には行かないんですね」
「あえてな」
また話す先生だった。
「そうするからな」
「ううん、資料館を行かずに」
「他の場所に」
「残念なことにカープ関連は行かないぞ」
野球の話も出た。
「あとサッカーもな」
「サッカーもですか」
「そっちもですか」
「それは自分達で学校を離れて行ってくれ」
こう生徒達に言う。
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