第五章
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「白米って澱粉質ばかりじゃない」
「うん、精白したお米はね」
「それがひょっとしたらっていうのよ」
「栄養的にはなの」
「そんなことをちらりと言ってたのよね」
「ううん、白米ねえ」
「白米でいいわよね」
美沙子は首を傾げさせながら私にこうも言って来た。
「そうよね」
「カレーは白い御飯で食べるわよね」
カレーパンやカレーうどんならともかくだ、カレーライスなら。
「確かに御飯も大事だけれど」
「温かい御飯でも冷えた御飯でも」
一度中国の人と仕事で一緒になった時に冷えた御飯はいいと言われたことがあった。あちらでは冷えた御飯は食べないらしい。
けれど日本では冷えた御飯でも食べる、それで美沙子も言ったのだ。
「そうよね」
「白い御飯よね」
「美味しく炊いたね、そういうのじゃないの?」
「まあ部長もちらっと言っただけだからね」
「気にしなくていいのね」
「そう思うわ、特にね」
こう美沙子と話した、美沙子は特に気にしていなかったが私は妙に引っ掛かった。これまでは御飯は美味しいものを出してメインはあくまでルーだと考えていた。
だが、だった。ここで。
私は仕事から帰ってお風呂に入り今はカレー以外の和食を食べてそれでビールを飲んでいるとお母さんにこう言われた。
「ねえ、カレーは海軍からはじまったわよね」
「ええ、帝国海軍ね」
カレーの歴史も知っている、このことも。
「身体にいいからね」
「そうよね、けれど海軍って脚気が問題になってたわよね」
「ええ、そうなのよ」
私はこのことも知っていた、大学の講義で習った。
「それで麦飯を入れたのよ」
「そうだったわね」
「陸軍は思うようにいかなかったのよ」
森鴎外、本名森林太郎という医師が反対していたからだ。言うまでもなくあの文豪だ。
「それで日露戦争の時もかなり死んだのよね」
「麦飯ね、じゃあ海軍じゃね」
「うん、海軍がどうしたの?」
「カレーの御飯も麦飯だったのよね」
「あっ、そうなるわね」
言われて気付いた、このことに。
「そういえばね」
「そうなるわよね、やっぱり」
「うん、今まで気付かなかったわ」
「麦飯のカレーって美味しいのかしら」
お母さんは私にこう尋ねてきた。
「どうなの?そこは」
「いや、私いつもカレーライスは白い御飯だったから」
その脚気になるだ、今の時代脚気なんてないからそのことは完全に安心していて食べていたのだ。
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