第三幕その二
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第三幕その二
「貴方にこの心を捧げます」
「それでです」
また話すのだった。
「カッシオ殿のことですが」
「むっ」
その名を聞くと顔を顰めさせる。無意識のうちに汗さえ出る。
「どうされました?」
「いや、何でもない」
だがその心の揺れは隠すのだった。
「気にするな」
「ですが」
ここでデズデモーナはハンカチを出す。しかしオテロはそのハンカチを見てその顔にさらに不吉なものを及ばせた。そうして言うのだった。
「待て」
「?何か」
「ハンカチだ」
顔を強張らせて妻に対して言うのだった。半ば叫びながら。
「ハンカチを出せ」
「ハンカチ!?ですから」
「違う」
強張った声で言う。
「わしが御前に最初に与えたそのハンカチだ」
「そのハンカチですか」
「そうだ。それを出すのだ」
妻を見据えながらそう問い詰める。
「よいな」
「それは持っていません」
「何っ!?」
その言葉を聞いたオテロの顔がさらに強張る。半ば立ち上がっていた。
「よいか」
「は、はい」
オテロの剣幕に怯えながらも応える。
「あれをなくしたら承知できぬ。ある強い力を持った魔女が神秘の糸で織ったものなのだ」
「神秘の糸で」
「そうだ」
彼は言う。
「魔除けの素晴らしいまじないがかけられている。若しなくしたり人にやったりすると禍を招くのだぞ」
「そうだったのですか」
「本当だ」
妻にはっきりと答える。
「それでどうしたのだ?」
「それは」
「答えよ」
不吉な顔で妻を問い詰める。
「どうしたのだ、そのハンカチは」
「持っています」
「持っているのだな」
「はい」
少なくとも彼女はそう思っている。なくしたことに気付いていないのだ。
「それは確かに」
「では探せ」
汗を流し血走った目で迫る。
「わかったな」
「は、はい」
「話はそれからだ」
「あの、それでは」
デズデモーナは困った顔で妻に対して言うのだ。
「カッシオ様のことは」
「言ったな。それからだ」
言葉は突き放したものになった。
「それにだ」
「それ・・・・・・に!?」
「御前はわしの何だ」
その血走った目でデズデモーナに問う。問い詰める。
「何なのだ。言ってみよ」
「オテロ様の忠実な妻です」
答えはこうであった。これしかなかった。
「そうだな。では誓え」
「誓います」
「地獄でだ」
妻を見る顔が呪わしげになる。それはデズデモーナが今まで見たものではないしオテロ自身も今まで浮かべたものではなかった。
「地獄で・・・・・・」
「そんな、私は」
「わしは御前を汚れた女だと思っている」
「そんな・・・・・・」
「では聞く」
あらためてデズデモーナに対して問う。やはり問い
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