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SAO−銀ノ月−
第五十五話
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 今日も今日もで、リハビリを兼ねるという言い訳をしつつ、母屋にいる両親には何も言わずに家を出て行った。
自分で言っていてとても悲しいものの、剣道の道をSAOに絶たれてしまった今、俺は他の生きる方法を見つけなければいけないのだ。

 しかし、これまでの17年の生涯を全て剣道に捧げて来た代償は重く、俺はもうどうして良いかも解らなかった。

 考えている内に俺が無意識に来ていたのは、《ダイシー・カフェ》という、喫茶店というよりバーに近い様相を呈した店だった。
SAOで中層プレイヤーの育成を手伝っていた商人プレイヤー、《エギル》が現実でやっていた店だと、キリトから聞いていたらか。

 キリトが言っていた通りSAOにいた時のまま――システム上当然だが――ガタイの良い黒人が、その喫茶店《ダイシー・カフェ》の前に佇んでいた。

「よう、エギル……だよな?」

 目の前にいた男は確かにエギルだったが、日本人には外国人の区別がつきにくい、ということを思いだして念の為に付け加えた。

「お前……ショウキか!?」

 ……ああ、どうやら人違いではなく俺が知っているエギルのようだ、と安心している間に、そのエギルの巨体に胸を小さく殴られた……小突かれたと言った方が良いか。

「生きてるのはキリトから聞いてたがよ……だったら早く顔見せろってんだ」

 アリシャと同じように来ることが遅いと糾弾されたが、愛想笑いしながらエギルに小突き返し、彼はこの現実世界に生きているのだと実感する。

「悪い悪い。しかしお前、喫茶店やってるってのは本当だった……って、もう閉じるのか?」

 エギルがドアに架けようとしているのは、《close》と書かれた木製の看板であったが、時刻はまだ午後になったばかりという時間だ。
喫茶店という職業にしては、むしろ今が稼ぎ時ではないか、と素人目から見てもそう思わせる。

「……ああ、まあ、な。ちょっと入ってけよ、再会を祝して乾杯といこうじゃないか」

 エギルは明らかに動揺していながら、店のドアにその看板を架けると、そのまま俺を招きながら《ダイシー・カフェ》の店内に入っていく。
あまり穏やかではないエギルの雰囲気に、俺も続いて《ダイシー・カフェ》の中に入っていく……丁度良く、腹が空いている時間だったこともあるが。

 店内はエギルの趣味と思わしき調度品が並んでおり、その喫茶店自体の雰囲気も相まって、なかなかに過ごしやすい喫茶店の空気を醸し出している。
旅番組のようなテレビで、『店主のこだわり喫茶店』のような紹介がされそうな喫茶店だったが、エギルはSAOが終わってからこの喫茶店を作ったのだろうか?

「なあエギル。この店、いつからやってるんだ?」

 エギルに誘われるままカウンターについた後、気になっ
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