第二幕その六
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いで叫んだ。
「またわしは!恐ろしいことを知った!」
「閣下!」
「わしの心は氷となった。そのここで今わしの虚しい愛を全て捨てる。毒蛇の如き憎悪がそのかわりに心の中を支配していくのだ!」
叫びながら一旦膝をつき。それからまた立ち上がって天を仰いで叫ぶ。
「わしはこの大理石の様な石にかけて誓おう」
窓から空が見えていた。その空は暗澹としており先程の晴れやかな世界が嘘のようであった。
「鋭く閃く稲妻にかけて!死が迫り破壊をもたらす暗い海にかけて!」
不吉なものに対して誓っていた。
「わしが掲げたり差し伸べるこの手が激しい怒りと恐ろしい衝動に間も無く閃き輝くだろう」
「閣下」
そのオテロにイヤーゴが言う。
「何だ」
「私もまた」
「誓うというのか」
「はい、閣下の為に」
悪魔の素顔を隠してオテロの側に来た。
「それを誓いましょう。私を照らし広い大地と全てを生気付ける太陽が私の証人です」
イヤーゴはそんなものは信じてはいない。だからこの誓いは紛れもなく偽りである。オテロも誰もそれを知らないのであった。
「ですから。貴女に全てを捧げましょう」
「わしに誓ってくれるか」
「はい」
偽りの誓いを今述べる。
「ここに。貴方の意志が恐ろしい仕事の為に固められますように」
二人は今誓い合う。暗きものを前にして。オテロは真だったがイヤーゴは偽りだった。しかしそれもまたイヤーゴだけが知っていることだった。何もかも。
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