肉体派魔法少女
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く地面を蹴り出す。景色が全て線に変わり、風が衣服をはためかせた。
トップスピードで駆ければ、魔女はこちらを見失って狼狽えている。
私は拳を構え、全力で魔女の土手っ腹に打ち込んだ。
『ァィイイイイイイイ!?』
拳を中心にして衝撃が伝播し、醜く太った体が宙に浮きあがる。
吹き飛ぶ魔女を追いかけて、膝を折って溜めをつくり跳躍。
弾丸の勢いで飛び出した速さをそのままに、撓らせた足を振り下ろす。
踵落としが流星の如く突き刺さり、超重量を地面に叩き落とした。
激しい破砕音と共に罅が広がり、落書きが砕けて消えていく。
私はそれを眺めながら束の間滞空し、魔女の上へと落下する。
空中で身を捻って右腕を引き、左の手で照準をつけた。
「ォオ、ッ!!」
歯を食いしばって放った一撃が、魔女を貫いて結界を壊した。
「ふーっ。」
排熱するように息を吐き、変身を解除する。
辺りは夕暮れの路地裏へと戻っており、それが戦いの終わりを告げていた。
私はゆっくりと歩いて近づき、地面に直立しているグリーフシードを回収した。
細緻な銀細工に収まった黒い宝石は、光を照り返さない闇を思わせる。
夕焼けに染まらないそれをソウルジェムに近づけると、黒い靄が浮き出た。
それはグリーフシードへと吸収され、魂は濁りの無い姿へ戻っていく。
その様子を眺めながら、私はようやく安堵することが出来た。
私が先ほど閃いたのは、真幸の願いに関することだった。
真幸の願いは強い自分、ならば、その魔法は自分に作用するものではないのか。
それに加え、先ほどの逃走の際に発揮した異様な足の速さ。
両者を鑑みて推測した固有魔法は、私の予想に違わずその効力を発揮した。
自己強化。それが、真幸の固有魔法だった。
魔法少女なら誰でも出来る、自身の肉体を強化する魔法。
ただし、真幸のそれは、願いによって大幅に強化されていたのだ。
敵の視界から一瞬で去るスピード、魔女の巨体を浮かせるほどのパワー。
それらに翻弄されないだけの視力、反射速度と頑強さ。それこそが真幸の魔法であった。
私は魔女を化け物と罵ったが、自分の方がよっぽど化け物じみている。
何気なく動かしていた体に畏怖を感じ、私は自分の手を見つめた。
「あら、確かに反応があったと思ったのだけれど。」
不意に声が耳を打ち、私は音の方へ俯いていた顔を跳ね上げる。
そこには夕焼けの色を跳ね除けて光る、魂の輝きがあった。
感傷に浸る暇もない。私は指輪に戻したソウルジェムを、ポケットに隠した。
まさか、魔法少女と遭遇するとは。逆光で顔が隠れた彼女が、こちらに歩み寄ってくる。
やがて物陰へと入り、その顔がはっきりと見えるようになったとき、私は驚いて口を開けた。
驚愕に歪んだ表情は彼女にどう見えたのか。怪訝そうな
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