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小料理屋”伴鳥”(ばんちょう)、恋姫世界で営業中! ※地方への出張開店も承っております。
第一話 小料理屋伴鳥、建業へ出張
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後書き
ま少年は純吾の前へ走り出て、そう問いかける。問いかけられた純吾は、どすんとしょった荷物を置いて、くしゃりと少年の頭を一撫でしてから言う。
「ん…。お願い、マオ」
マオ
(
猫
)
と呼ばれた少年の、これまた猫の様なくりくり目がひと際大きくなる。主と慕う青年に頼まれた事の嬉しさから、先ほどよりもきゅーっと口元がつり上がった。
どすんと荷物を地面に置く。空いた両手を組み、頭を組んだ両手の位置まで下げる礼をした。惚れ惚れするような綺麗な拝礼だった。
「ではっ!」
マオはにんまりとした顔をあげる。
「…おうっ」
ぼそっと、けれども嬉しそうに純吾がそれに返した。
マオは瞬時に拝礼をやめ、純吾に向かって走り出す。純吾も荷物を離した手を組んで、腰を落として待ち受けていた。たたんっ、とんっ、とマオは軽やかに跳躍し、純吾が組んだ手の上に足をかける。その瞬間、純吾は組んだ手を大きく振り上げ、マオも空高く舞った。
蒼穹を背負い、くるくると回るマオ。突然の雑技に、どおぉっと建業の住民が湧く。
やがて、純吾達が立っているすぐ後ろの家の瓦の上に、音も無くマオは降り立った。そして振り返り、どこからそんな声が出てくるのか、建業全体に響き渡るような大声でこう言った。
「さぁさ建業に住まう皆々様! 我が名はマオ、ただの
マオ
(
猫
)
にごさいまする! そしてこれなるは、天下一とは言わねども、天下唯一の料理の腕を持つ我が主鳥居純吾と、その女房役「はあぁっ!?」の伴亜衣梨にございます。我ら荊州にて小料理屋伴鳥なる店を構えておりますが、本日はこの地まで行商に参りました!
……就きましては、どなたか我が主に腕を振るう場を貸しては下さらまいか!?
そも楽を得ようとすれば、楽しむべき時を逃してはならぬと言いまする。我が主が手をかせるのはただ一店のみ、時を座視して見送り、どうして楽しみを得ることなどできましょうか!?」
そこでどこから取り出したか、真紅の猫と瓢箪を掛け合わせた軍配を手に持ち、天に掲げて宣言した。
「只今をもって小料理屋“伴鳥”、呉国建業の都にて出張営業を開始いたしまするっ! 我らと共にこの都に楽を齎してくれる店は何処か!? さぁ、名乗りをあげられよっ!!」
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