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小料理屋”伴鳥”(ばんちょう)、恋姫世界で営業中! ※地方への出張開店も承っております。
第一話 小料理屋伴鳥、建業へ出張
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ちらこちらで聞えてくる。彼らから発する熱気は、降り注ぐ太陽の光にも負けず劣らずのものだった。
 ようやっと中華全土を巻き込んでの戦が終わった今日日、人々の生きようとする力は、まさに天を衝かんばかりのものだった、という事だろう。

さて、そんな夏の入道雲が如き勢いの建業に、風変わりな三人の旅人が城門をくぐってやってきた。

「…ついた」

 先頭を歩くのは一人の男性だ。
 まずの印象としては、大きい。そこらを歩く人波の間から、にょきりと彼の頭が見えるほどだ。顔は、目深にかぶった帽子が影をつくって見えづらい。ただ眠そうな、それとも何か常に思索していそうな、涼やかに細められた目が印象的だ。
 名を鳥居純吾という。字はない。姓が鳥居、名前が純吾だ。
 そんな大男が、がちゃりと背負った荷物の位置をなおすと、言葉少なにそう言った。

「うあ゛ぁぁぁ〜。やっと休めると思ったのに、街の中の方があっついってどうゆう事よ…」

 振返った先にいた少女が、少女らしからぬ声をあげる。
 白いふわふわとした帽子と、その下にある燃える様な色の髪が最初に目を引く少女だ。まぁ、それが最初に目に飛び込んでくるのに丁度良い背の高さをしている、というのも考慮に入れないといけないが。
 顔立ちは、可愛らしいという言葉がしっくりくる。ぷっくりとした卵を逆さにした様な輪郭に、ぱちっと開かれた目と小生意気な鼻梁、小さな花弁が二枚乗っているかのような唇が彼女を彩っているからだ。もっとも、本来なら勝気で生命に溢れた表情をしているその顔は、今は旅の疲れでげんなりとしていた。
 名は伴亜衣梨、こちらも純吾と同じで字はない。珍しい名である。

「はっは、善き事ではないですか。この熱気の、なんと生に充ち溢れている事か! まこと、孫王は良き政をなさっておられる」

 最後に笑って答えたのは、もう一人の連れの少年。
 この中では一番背が小さい。十をようやっと超えた位の年頃にしか見えない少年は、しかし大いに注目を集めていた。それは、今もガラランガラランと、少年と一緒に笑い続ける大きな荷物のせいだけではない。
 猫の耳と、猫の尻尾。
 それらが少年にあったからである。黒い毛並みの猫耳が、特注だろうか、耳がでるように穴のあけられた立派な兜の間からひょこりと覗く。また埃で薄汚れてはいるが、しっかりとした作りの上着と袴の間から、艶やかな黒い尻尾がふらふらと嬉しそうに揺れている。
 そんな彼だから、行きかう人はこう思い、注目を集める訳である。噂では、南蛮に住む者たちは猫耳尻尾があるという事だが、彼もその出なのだろうか? けれど、それにしては所作に卑しい所はないし…、ううむ、分からん、と。

「さって。それでは、主」

 通行人達の悩みなんてまるで知らず、にっこりとした顔のま
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