第五十話 地ならし
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ハルト。ヒルダとシュトライトもリラックスしている。話しやすい状況だ。
「ヴァンフリート星系の事です」
「ヴァンフリートか……」
ラインハルトが困惑した様な声を出した。ヒルダとシュトライトもちょっと困っているな。やはりヴァンフリートは問題だ、放置はできない。
「ヴァンフリート星系は同盟から黒姫一家に譲度されました。つまり法的には帝国領の一部とは言えない状況です」
「そうだな」
眉を顰めている。まあ俺がラインハルトの立場でも眉を顰めるだろう。宇宙でこんなあやふやな土地は他には無い。
「自由惑星同盟が滅びた事で同盟との間で結んだヴァンフリート割譲条約は効力を失いました。条約で禁止した第三者への譲渡は可能でしょう。帝国政府へ進呈しますので改めて我々の所有を認めて欲しいのですが」
「なるほど、一度帝国領として編入しろというのだな」
「はい、まあ色々と投資もしていますので差し上げる事は出来ませんが……」
ラインハルトが苦笑を浮かべた。
「そうだな、それではこちらも気が引けるというものだ。フロイライン、貴女はどう思う」
「頭領の提案を受けるべきかと思います」
この二人、相変わらず男女の柔らかさというか温かさみたいなものは感じない。やっぱり結婚は無理かな、これは。
「ではオーディンに戻り次第手続きをするか」
「いえ、出来る事なら新帝陛下の戴冠式での御祝いの品として黒姫一家から献上したいのですが」
ラインハルトが一瞬目を見張って笑い出した。ヒルダ、シュトライトも笑っている。
「その上で私から卿に下賜するか。……卿は演出が上手だな。新王朝の門出に相応しい祝いの品だ。その案、使わせてもらおう」
「有難うございます」
戴冠式に領地を献上する、そしてそれを改めて下賜する。新帝即位に花を添えるだろう。形式だけだとか煩く言う奴も居ないはずだ。新皇帝と黒姫一家の絆の強さを表す事にもなる。
「それともう一つお願いが有るのですが……」
「何だ?」
「イゼルローン回廊の事ですが銀河統一後は全面開放を御考えいただきたいのです」
嫌がるかな?
「その事、私も考えていた」
あれ? 考えていた?
「卿の考えを分からぬではない、新領土と帝国領を経済で結びつけようと言うのだろう」
「……」
「回廊を開けば危険は有るだろう、民主共和政という思想が帝国領に入って来ることになる。だが帝国も改革を進めている、成果は十分に上がっている、負けるとは思わない」
「公平な税制度と公平な裁判、ですか」
ラインハルトがゆっくりと頷いた。自信が有るな、統治者として自分のやっている事に手応えが有るのだろう。悪くない、実際帝国の住民はラインハルトの改革によって救われているのだ。怯えて閉じるよりはずっといい。
「回廊を閉じるより開いた
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