第二話 出会い
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そう言うと刃は遼に掴みかかる。
遼は抵抗せず、ただ彼の瞳を睨みつける。
「この子、嫌がってる……」
それで十分とばかりに遼はこれ以上何も言わない。
その全てを見通すようなその瞳に気圧され、彼は思わずその手を離す。
彼女は自由になると右手で胸元を正す。
その様子をただ見ていた刃だったが、ふと我に返ると遼に向けて殴りかかった。
(こんなガキ相手に俺の能力を使うまでもないな、この体の基本性能なら誰にも負けるはずがない)
そう思っていた。
遼は左手に持っていた買い物袋からみかんを取り出すと、そのまま握りつぶした。
「う、おおおおおおおおおおおおお! 目が! 目がああああああああああああああ!」
飛び散ったみかんの汁が刃の目にうまく入ったようで、彼は目を押さえて地面を転がる。
「今日のおやつ…………」
遼は無残に握りつぶされたみかんを残念そうに見つめる。
これではもう食べても美味しくないだろう。
精々料理の香り付けぐらいにしか役に立たない。
そう落ち込んでいると懐かしい黒電話の音が辺に響く。
遼は右手で携帯電話を取り出そうとして、右手がベタベタなのを思い出して左手で電話にでる。
『ああ、遼、買い物にしては少し遅いですけれど何かあったのですか?』
「ちょっと道に迷っただけ、すぐ帰る……」
『道に迷った! 大丈夫なのですか!? 知らない土地で一人寂しいのではないですか!
待っててください、今位置を特定して救出に――』
「慌てすぎ、後五分以内に帰るから、待ってて……」
遼はそう言って電話を切ると、走ってその場を後にした。
なのはの存在を忘れて。
side なのは
一体彼は誰だったのだろう。
突然現れてはこちらに目もくれず、そのまま走り去っていった彼。
次に会った時はちゃんとお礼を言おう。
ちゃんと名前を聞こう。
きっと、きっと、彼とはお友達になれると感じたから。
…………それはそうとそこで苦しんでいるあの子には関わりたくなかったので、急いで家に帰ることにしたの。
side 遼
「ただいま」
扉を閉め鍵をかけると、台所から走ってくる足音が聞こえる。
「遼! 遼なのですね! ああ待ちわびましたよ遼! 変なの人に声かけられたりしてませんか? どこか怪我していませんか? 変装は完璧ですがそれでも遼の美貌は――」
「クリム、苦しい……」
急に抱きつかれて、彼女の胸に埋もれる私。
これが男の子なら喜ぶべき状況なのだけれど、生憎私は女の子、少し羨ましいとは思うけれど、欲情はしない。
「ああ、すいません遼! 私
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