第百三十話 南蛮具足その四
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「では行くがいい。しかしじゃ」
「しかしとは」
「戦は仕方ないが無道はするでない」
これを理由に信長を牽制したのだった。
「それはわかっておるな」
「無論、この信長誰にも乱暴狼藉は許しませぬ」
このことは最初からそのつもりだ、織田家の軍勢にそうしたことを許すつもりは一切ない、だからこそすぐに答えられることだった。
「このことはご安心下さい」
「ならよいがな」
「では朝倉氏を懲らしめしかるべき仕置きも行います」
「それも任せた。ではな」
義昭はこれで信長を己の前から去らせようとする、だがだった。
信長はその義昭にあるものを差し出して来た、それはというと。
白く先が尖った四角いものだった、木で出来ている感じだ。
そして真ん中のところがまるく何かがかちこちと動いている。義昭はそれを見て怪訝な顔になり信長に尋ねた。
「これは何じゃ」
「南蛮の時計です」
それだというのだ。
「この前南蛮の坊主から献上されたものですが」
「それを余にというのか」
「はい」
その通りだというのだ。
「そうさせて頂きます」
「南蛮の時計とな。真ん中が動いておるが」
「これで時間がわかります」
信長は時計について説明をはじめた。
「今何時かも」
「水時計の様なものか」
「それよりも正確です」
「ううむ、面妖な」
「お気に召されませんでしたが」
「いや、そうではない」
あからさまにいぶかしむ顔だが何とか冷静さを保って応える。
「ただ。それでもじゃ」
「それでもとは」
「この様なものがあるのか」
「はい、南蛮には」
「からくりの様じゃが」
「実際に南蛮のからくりです」
それで動くものだというのだ。
「南蛮には他に多くのものがあります」
「南蛮はどういった場所じゃ」
義昭は真剣にいぶかしむ顔で言った。
「この様なものがあるとは。他にもあるか」
「左様であります」
「まああれじゃ。右大臣が献上してきたものを無下にはせぬ」
器が大きい人間ということを何とか見せようとして言う。
「これは受け取っておこう」
「有り難きお言葉」
「しかし右大臣はこうした時計を持っておるのか」
「一つだけですが」
「そうか、持っておるか」
「地球儀もありますので」
これもあるというのだ。
「今堺には南蛮のものが多く入っております」
「あの町からか」
「公方様さえ宜しければ」
信長は義昭に告げながら彼の傍にいる天海と崇伝も見た、だが今は何も言わず義昭に言ったのである。
「これからも南蛮のものを」
「余に献上するというのじゃな」
「そうさせて頂きますので」
「期待しておこう。南蛮か」
「耶蘇教のものもあります」
ここで天海と崇伝の顔が歪んだ、信長はこのことも見逃さなかったが
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