第百三十話 南蛮具足その三
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「何じゃあの大軍は」
「これから越前を攻めるものですが」
「それですが」
既に青い服を着ている幕臣達が答える、見れば天海と崇伝以外の全ての者が織田家の青い衣を着ている。
「既にお話は公方様にもいっていませんか」
「そうではないのですか」
「十万とは聞いておらぬ」
義昭は冷静な彼等に目を剥いて返す。
「六万ではなかったのか」
「いえ、十万です」
「右大臣殿は最初から十万と仰っています」
幕臣達はあくまで冷静である。
「その十万の兵で朝倉殿を懲らしめられると」
「そう仰っていました」
「六万で充分であろうに」
義昭はいぶかしむ顔も見せていた。
「ここまで大掛かりな戦を挑むつもりか」
「右大臣殿に何か思われるところがあるのでは」
「確かに十万はこの場合尋常ではありませぬな」
この時に天海と崇伝が義昭に言った。
「御所の帝にえらく褒められたとか」
「特別に贈りものを頂いたそうです」
「帝にか」
義昭はこのことにも驚きの顔を見せる。信長は御所には最後に赴きそのうえで帝に多くの贈りものをするつもりだがその前に既にだったのだ。
その帝からの贈りものを貰っていた、それで義昭は言うのだ。
「余は帝から頂いたことなぞ滅多にないぞ」
「ですな、右大臣殿には何かとですが」
「帝はそうされていますな」
「武門の棟梁は余であるぞ」
今も強くあるこの自負からの言葉だった。
「その余よりもというのか」
「右大臣殿は帝や公卿の方々に何か贈りものをされていますし」
「そのせいかと」
「そうしたことは余がするものだ」
その力もないが言ったのだった。
「それを右大臣は」
「公方様、右大臣殿が若し何かされれば」
「その時は」
「そうであるな」
義昭は二人の僧に苦い顔で返す。
「余も何もせぬ訳にはいかぬわ」
「あの、宜しいでしょうか」
やはり青い衣を着ている明智が戸惑いながら義昭に言って来た。天海と崇伝の言葉を塞ぐ意味もあった。
「右大臣殿が来られます」
「そうであったな」
「それでなのですが」
「会わぬ訳にもいくまい。それに御主達も出陣するな」
「はい」
明智はその通りだと答える。
「そうさせて頂きます」
「ふん、まあよいわ」
渋々といった感じの承諾の言葉だった。
「戦をするからには勝って参れ」
「さすれば」
「しかしじゃ。朝倉家じゃが」
十万の大軍となれば戦の趨勢は明らかだ、戦はまだはじまっていないが義昭でも容易にわかることだった。
「このことは右大臣に言おう」
「では右大臣殿を」
「ここに呼ぶがいい」
「畏まりました」
こうして不穏な気配がありながらも義昭は信長と会うことにした、信長は主な家臣を大勢連れて彼の前に現れた。
今は青い服と冠だ、そ
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