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ラ=トスカ
第五幕その三
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「フローリア、スカルピアは僕を殺すつもりだったんだ」
「え・・・・・・」
 トスカは顔を上げた。その黒い翡翠の様な瞳を見つつカヴァラドゥッシは続けた。
「あの警部を見て解かったんだ。妙に態度が後ろめたかっただろう」
「そういえば・・・・・・」
 スカルピアとのやりとり、礼拝堂やこの処刑場での行動、どれを取っても面妖な点ばかりであった。
「だから僕はあの十字架を受け取り君に別れを告げたんだ。もうこれで最後だと思ったからね」
「それで・・・・・・」
 今まで教会で祈り一つしなかったカヴァラドゥッシが何故十字架を受け取ったかトスカはようやく解かった。恋人からの最後の贈り物を受け取ったのだ。
「けれど君の贈り物が僕を救ってくれたんだ。見てくれ」
 そう言うと懐からその贈り物を取り出した。
 十字架は所々が砕けていた。それが弾丸によるものである事は明らかだった。
「ああ・・・・・・・・・」
 トスカはそれを手に取った。そして両手で強く握り締めた。
「腕に一発当たって貫通したけれどね。他は全てこの十字架が守ってくれた。君のおかげだよ」
「いえ、神のお力よ」
 トスカは感極まった顔で言った。熱い涙が頬から銀の十字架へ落ちていく。

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