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八条学園怪異譚
第三十三話 踊る本達その十四

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「あんた達はどうか知らないけれどね」
「エスよ、エス」
「二人の場合はそうだって本当にわかるわ」
「物凄くね」
 二人はこう返した。
「けれどろく子さんがエムっていうのは」
「今一つピンとこないのよね」 
 彼女に関してはそうだというのだ。
「エムって言われてもね」
「本当かしらって」
「とはいってもエスかっていうとね」
「そうでもないから」
 ろく子はまた違うというイメージだったのだ。
「知的で教養があってね」
「大人な人って感じで」
 それが二人のろく子へのイメージだった、エスやエムといった要素は彼女から特に感じることはなかったのである。
 だが今話を聞いてだ、そして話すのだ。
「けれどエムですか」
「攻められる方なんですね」
「攻めることには抵抗があります」
 そうだというのだ。
「どうしても」
「ううん、私はっていいますと」
「私もです」
 愛実と聖花は首を傾げさせて話した。
「攻めるのは好きじゃないです」
「まだそうした経験はないですけれど」
「だからエムでしょうか」
「そっちになります?」
「では言葉とかで攻められたりするのお好きですか?」
 ろく子はその二人ににこりと笑って答える。
「そういう趣向でしょうか」
「いや、いじめとか嫌いです」
「することもですけれどされることはもっと」
 二人はそうしたことをいじめとも認識していた、だから好きではないというのだ。
「ですから、言葉で攻められるとかは」
「あまり」
「違いますよ、エスとかエムはいじめではないですよ」
 このことはちゃんと訂正を入れるろく子だった。
「趣向ですから」
「趣向ですか」
「それなんですか」
「そうです、あまり深刻に考えられることではないです」
 いじめだのそうしたヘビーな話ではないというのだ。
「趣向なので」
「何かその辺りがよくわからないですけれど」
「どうにも」
 そうしたことに疎い二人にはだった、そうした話をしながら。
 二人は酒を受け取った、そのうえで今度は保育園に行くことにした、そしてその後は美術館だ、そこまでの順番を決めて。
 周りを飛んでいる本達を見てこう言ったのだった。
「このまま回っていてもね」
「面白いかもね」
「泉を見つけることは忘れないけれど」
「こういうのもね」
 妖怪達との交流に楽しみを感じていた、二人にとってそれは楽しくかつなごみを感じる、そうしたものになっていた。


第三十三話   完


                  2013・4・21
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