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ラ=トスカ
第五幕その一
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の指輪だ。
「えっ、よろしいのですか?」
「もう僕は死を待つ身、それなのに持っていても無意味だろう?気にしないでいいからチップだと思って受け取ってよ」
「・・・はい」
 看守はそれを受け取った。
「じゃあ手紙の事、くれぐれも頼んだよ」
「解かりました」
 二通の手紙とルビーの指輪を受け取った後看守は礼拝堂を後にした。カヴァラドゥッシ一人が残った。
「もう一時間か・・・。一眠りするか」
 上着を掛けまた眠りはじめた。すぐにまどろみだした。
 意識が遠のいていく。その中でカヴァラドゥッシは夢の世界へと入っていった。
 夜空に無数の星々が瞬いている。その光は星の数だけ多様である。そして庭には色彩り彩りの花々と若い草木が芳わかしい香りを発している。その中に彼はいた。彼女もいた。共に楽しみ愛の言葉を交わし合うーーー。かっての素晴らしき日々の思い出だった。
 「まだこの世に未練があるのかな」
 カヴァラドゥッシはふと目が覚め苦笑交じりに呟いた。
「絵とアンジェロッティが気懸りだが・・・。絵は何時の日か誰かが僕の志を受け継いで完成させてくれるよう祈るしかない。アンジェロッティは・・・生きていてくれ、友よ」
 再び目を閉じた。そして再び眠りへと入っていく。
「子爵、子爵」
 誰かがカヴァラドゥッシの右肩に手を掛け静かに揺り動かした。ふと目を覚まし声のした方へ顔を向けた。
「ああ警部、貴方でしたか。眠っていたのですが。私に更に深い眠りを知らせる為に来られたのですか?」
「いえ」
 スポレッタは静かに右手と顔を振ってそれを否定した。

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