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ソードアートオンライン 弾かれ者たちの円舞曲
第伍話 《真っ黒》〜後編〜
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の……! 死ぬことも殺すことも御免だよ!」
シキは鍔迫り合い状態の大剣を蹴り上げ、回転しながら遠心力を加えてナイアへと斬りかかる。
ナイアはその斬線を、見ていることしかできなかった。
きっとこの斬撃はナイアを殺してしまうだろう。
だが、不思議と悔いはなかった。
まだ生きていたい。それでも、この苦しみから開放されるのであれば、それも構わないのかもしれない。
だから、ナイアは満面の笑顔で、言った。
「――――ありがとう」

      ○●◎

「で、シキ君よ。随分帰りが遅かったな?」
街の仮住居である宿屋に戻ると、一人の少年がシキを出迎えた。
「シン、か……」
「……? 何かあったのか?」
疲れきった様子のシキに訝しみ、質問するが、彼は苦笑しながら軽く手を振って無事の意を示す。
シキの姿はいつもと変わらない。
黒髪も、青い瞳もいつもと同じだ。
だが、何かが違うような気がした。
「ま、ちっとな。クエストの報酬は金だったぜ」
そんなことを言いながら二階にある自分の部屋へと戻っていくシキ。
その様子は無理矢理会話を終わらせたかったようで、ますますシンに疑問を抱かせたが、既にシキは上階へと上っており、後ろ姿は見えなくなっていた。
「あ、おい。シキ――――はぁ」
今日何度目かの溜息を吐き出し、シンも自室へと戻ることにした。

      ○●◎

「…………結局、私死ねなかったのね……」
くたびれた教会の中で、大の字に倒れたナイアはぽつりと呟いた。
シキはあの時、ナイアの線や点を攻撃することはしなかった。
ただ首のあたりを切りつけられ、しばらくの間気絶していたようだ。否、気絶させられていたというのが正しいかもしれない。
どうやったかは分からないが、あの少年は数十秒程度ナイアの『意識』を一時的に殺した。
「はぁ……。一瞬、死んでもいいと思えたのになぁ……」
「ほう? 随分と変わったのだね」
いつの間にか、長椅子に座った人影がナイアを見下ろしていた。
「げ…………」
「げ、とはなんだね。げ、とは」
心外だ、とでも言いたげに肩を竦める劇役者風の男。
「それにしても、ねぇ……」
「……何よ」
仏頂面で劇役者風の男へと目をやると、彼はにやにや笑いを浮かべていた。
「ふふ……。いや、変わったのだとね。いつも仲間から外れて独りぼっちを演じていた君とは変わったのだな、と」
「なっ――――!!」
かばっと勢い良く身体を起こし、劇役者風の男に掴みかかっても、劇役者風の男はただ笑っているだけだった。
「何というかねぇ……。例えるなら、君は鳥だったのだろうね。どこまでも飛んでいけることを知りつつ、されど君はあの娘を思っていたからこそ、君は籠の中で収まり続けた」
何とも虚しい話だね、と劇役者風の男は少し悲し
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