第伍話 《真っ黒》〜後編〜
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流れていた。
「〜〜♪〜〜〜♪」
彼女はシスターの格好をしているから教会にいるのではない。あの唄をある教会で友人に教えてもらったから、シスターの格好をしていているのだ。
いうなれば、思い出を引き摺っているだけだ。
「〜〜♪〜♪………?」
その時、ナイアの聴覚はピキッ、と何かにヒビの入る音を聞いた。
その音は次第に大きくなり、遂にはガシャァァン、とガラスの割れるような音を立てて、ナイアの傍らの棺桶が、内側から破壊された。
「ふぅっ……! ちょっとばかり危険な賭けだったが……何とか成功したみたいだな」
真っ白な髪を振り乱し、赤い瞳の少年が、棺桶の残骸の中から現れた。
「お、まえ、は……!?」
ナイアの目の前にいる存在は、先刻までのシキとは明らかに違う、異質なものだった。
頭髪は黒から白へ、瞳の色は青から赤へ、そして雰囲気は若干ながら柔らかい印象があったが、今は刺々しい空気を纏い、そして心底楽しげに口を三日月の形へと変化させて笑っていた。
「おいおい。殺そうとした相手の外見も忘れたのか? それとも、もう俺は死んだから、名前はもう忘れたとかか?」
飄々と言って、少年は笑顔を苦笑へと変える。
「シキ……? 貴方、が……?」
「そうだ。と言いたいところではあるが……混ざってるらしいんだよなぁ……」
小さく肩を落として、シキは謎めいた言葉を吐いた。
「何ですって……?」
「何でもねぇよ。さて、と。リターンマッチといこうぜ。……断るのか?」
シキは後腰からダガーを抜きもせず、そんな風に啖呵を切った。
ナイアは持ったままだった大剣をシキに向かって振るう。
シキは笑ったまま、床を蹴った。
それだけで赤い眼光が尾を引いて、シキは一瞬の内にナイアの背後へと回りこむ。
「遅いな。この程度かよ」
今にも笑い出しそうな声で、シキは言う。
ナイアは振り向きながら大剣での斬撃を繰り出す。
ヒュッ、とシキの姿が掻き消え、再度ナイアの背後に移動した。
「くっ、ちょこまかと……!」
床を蹴って、シキから一旦距離を取るナイア。
その様子を見、シキは肩を竦める。
「どうした? 俺が強くなりすぎたか? それとも、怖いのか? 死ぬことが――――」
そこまで言って、シキは上体を仰け反らせた。
その一瞬後、先程まで頭があった位置にナイアの左拳が突き刺さった。
シキはそのまま身体を素早く仰け反らせ続け、ブリッジして床に手をつき、ナイアの顎を蹴り上げる。
「チッ……!」
ナイアは少し顎を引き、蹴りをかわす。
シキは床に再び足を付け、クラウチングスタートのような姿勢になり、短剣を引き抜いてそのままナイアへと斬りかかる。
ガキィン、と高い音が教会内に響き渡り、先程までとは違い、二人の剣は拮抗する。
「死んでくれませんか……!?」
「嫌だって
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