第伍話 《真っ黒》〜後編〜
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わけないだろ。
と。
「…………ッ!!」
ナイアは顔を歪ませ、シキの首を更に強く絞めつける。
それでも尚、シキは笑う。
実に皮肉げに、苦しげに、シキは笑い続ける。
「――――――いいでしょう」
ナイアの表情から全ての色が消え、空いている方の手を苛つきを払うかのような仕草で振った。
その手の動きに反応し、ガタンッ、と棺桶が勢い良く開く。
「……ッ!?」
そして、シキは棺桶の中身を見、驚愕した。
その中には、汚泥のような、粘つき不気味に蠢いている真っ黒の混濁が、存在していた。
「――――さよなら」
ナイアは躊躇いなく、棺桶の中の混濁へとシキの身体を叩き込んだ。
○●◎
気付けば、シキは赤黒い空の下、赤黒の液体で溢れた地面の上に立っていた。
そして、シキの眼前には一人の少年がおり、シキを見つめていた。
頭髪の色は真っ白で、瞳の色は真紅、そしてどこか学ランに似た黒服を着た、シキと瓜二つの少年が、彼を見つめていた。
「よう、シキ」
そいつはどこか悲しげな顔で、シキに手を上げて挨拶してきた。
その声には、聞き覚えがあった。
「影也、か」
目の前の少年、影也はふぅと小さく息を吐いて、
「こうして会うのは、初めてだな」
「…………そうだな」
シキは影也の表情を訝しんだが、すぐに自分には他者の考えを理解できないと割りきって、質問する。
「お前、何者だ?」
「名前なら影也だが」
影也はおどけた笑いを浮かべ、言った。
「…………」
「おいおい。そんな怒るなって、まぁ…………いうなれば、お前だよ」
態度自体は軽いものの、後半は疲れきった風な笑顔を見せた。
「俺? 俺が何だ?」
「だから、俺はお前だよ。お前が直視できない、お前自身が嫌う部分そのものだ」
影也は特に何でもないに答える。
「…………次の質問だ。お前、あの時ハッキングとか言ったよな?」
「さて、何のことかな」
影也はそんな風にとぼけたが、
「キシマと戦ってる時に言ってただろ。でも、俺がお前なら、おかしいよな」
「………………」
シキの指摘に、影也は無言で返した。
「だって、俺にはそんな技術ないからな」
「…………くっ。はは」
影也はそこまで聞いて、堪えられない笑みを顔に表した。
「何で笑うんだ……?」
「いやな、お前がそこまで切れるとは思わなくて、さ」
くくく、とひとしきり笑った後、表情は戻さず、影也は答える。
「そうだ。俺はハッキングなんてしてねぇ」
「じゃあ、どうやったか教えてくれよ」
「教えるかよ」
影也は笑ったまま即答した。
その声には、有無を言わせぬ迫力はなかった。だが、どこか危ういバランスで保たれた天秤をシキに連想させた。
そのバランスが何かの拍子で崩れれば、影也がどうなるかなど、シキには
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