巻き込まれ系魔法少女
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ち止まって膝に手をつきながら振り返れば、追手の丸いシルエットは見えなくなっていた。
してやった。青臭い感情が泡のように浮かんで弾ける。
学生以来感じていなかった大人をコケにする興奮に、私は笑った。
一頻り笑って空を見上げると、太陽は中天に上っている。
家を出てから、まず最初に行ったのは買い物だった。
スーパーで食糧を買い込み、一旦家に戻って冷蔵庫内部を改装。
色味の無い中身は、野菜や肉やジュースの缶で色彩に溢れた。
他人に食わせる程では無いが、ちょっとくらいなら自炊は出来る。
まずは一つ。モデルルームみたいな家に、生活感を出してやった。
次にやったことは、服の購入だ。
野暮ったい恰好よりは、私の趣味が出た服がいい。
駅で地図を見て知った大型集合店舗に立ち寄り、服を選ぶ。
日中に一人の子供を訝しみ寄ってくる店員には、満面の笑顔をつくって、
「今日、創立記念日なんです!!」
こう言っておけば大抵の大人は騙される。
おしゃれに興味を持ち始めた『おませ』な子供を、彼ら彼女らは微笑ましく見守っていた。
服屋の店員は、少女が着るにはちょっとボーイッシュな服の数々に驚いていたけれど。
これで二つ。コイツの体を私の色に染め上げてやった。ぐへへ。
あとはトイレの個室で服のタグを切り、着替えれば完成。
袖を捲ったネイビーブルーのショートジャケットに、マリンボーダーのシャツ。
アースカラーのゆったりとした七分丈のパンツにデッキシューズ。
お前は海に憧れでもあるのかと問いたくなるコーディネート、ザ・没個性。
街並みに溶け込めるどころか、探せば似たような恰好の奴を数人見つけられるだろう。
おそらくそいつは高校生以上だろうけれど。中学生ならもう少し派手な格好をするだろうから。
とりあえず、そんなことよりも当初の目的達成に喜ぶべきか。
アニメの世界に、現実っぽい要素を持ち込んでやった。
実際この世界のつくりは驚くほどシビアだが、人々の見た目は割とファンシーだ。
髪色が凄まじく派手な人が多く、黄色い髪のサラリーマンを見て思わず笑ってしまった程度には。
だからこそ、見た目からして地味なこの体は、私にとっての現実的要素を体現するに便利であった。
これは、私がこの世界の法則に抗うための一歩なのだ。
私はこの世界の魔法少女になっても、自分の世界を手放したりはしない。
インベーダーに体を改造されてしまったが、心までくれてやるものか。
私こそがインベーダー、侵略者なのだ、ライバルに負けるなど許されない。
自分という世界をしっかりと保ち、けっして心を揺るがせない。
絶望など、してやるものかよ!
と、まあ意気込んだのはいいが、実際はその決意に反してやることが無い。
原作の登場人物を拝んでやろうかとも思ったが、
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