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あー、君。今日から魔法少女ね。
巻き込まれ系魔法少女
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「……………………。」
 結果、出来上がったのは折り重なって三十センチ程伸びた鉄板だった。
射程は相変わらずクロスレンジ。さやかの剣のように投げることもできず、杏子の槍のように分裂して伸びることも無い。
胸元を確認すると、ソウルジェムがちょっぴり濁っているような気がした。



 アクションゲームで産廃武器を握らされたような気分になってから数分後。
私は気分転換に出かけることにした。
日中に制服は拙いだろうと家中をひっくり返し、漸く見つけた真幸の私服に着替え鏡の前へ。
ドレッサーなんて気の利いたものは無いので、洗面所の据え付けの鏡だが。

「ふーむ、素材は悪くない。少々野暮ったいが、純朴そうなのが男受けするだろう、本来なら。」
 完全に他人事のように鏡を見つめる。
そこには、クソ生意気な面でこちらを値踏みする少女が立っていた。
身長は百五十センチほどだろうか、低い背にやや平坦なボディ。
目鼻立ちはすっきりしていて整っているが、中身の所為か目つきが悪い。
髪は肩先で切り揃えられており、前髪も眉下で切られている、所謂おかっぱ頭と言うやつだ。
もう少し後ろ髪が長ければ姫カットだなんて言えただろうが、お生憎様、髪を伸ばすつもりはさらさら無い。
目つきの悪い日本人形みたいな見た目のままで私には十分、女を感じる要素など願い下げだ。

 次に服装。某量販店で買ったようなセンスも素っ気も無い無地のブラウスに、野暮ったいデニムのスカート。
今時小学生だってもう少しオシャレしてるだろうなと言いたくなる服装である。
総じて評するなら、『西洋人着せ替え人形から服を奪った日本人形』だろう。
我がことながら笑えて来て、つい噴き出してしまった。
鏡の向こうの少女も、まるで男みたいにゲラゲラと大口を開けている。
しかし、それでいい。昨日から体に振り回されっぱなしだったが、今日は違う。
中身が私なら、主導権を握っているのも私なのだ。けして少女らしくなどしてやるものか。
学校にも通わず、日中から遊び回って散財してやる。
恨むのなら、悪い大人に体を明け渡した自分を恨むといい。
ケケケ、と、悪魔的な面で笑う鏡の少女。
彼女はそのまま札束一本をポケットに捻じ込み、これまた味気のないスニーカーを履いて家を飛び出す。
昨日は酷く不安だったこの世界も、開き直れば美しく見えた。

「こら、待ちなさい君、ちょっ、逃げるんじゃないッ!!」
 あばよ。後ろ手に大きく別れの挨拶をかますと、一目散に退散する。
車の入ってこられないような路地を抜けて走れば、メタボな警官の足では追ってこれまい。
不良少女に逃げられたくなければ、精々警察試験のときぐらいまで鍛え直すことだ。
走り続けて足りなくなった酸素を欲し、間断なく息を吸いこむ。

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