突発的魔法少女
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前にも取れる。
彼の言うまさきが一体どれを指しているのか。確かめるためには、今まで目を逸らしていた部分に着目せねばなるまい。
私は唾を飲み込むと、震える手をそっと股間に当てた。
「――――無い。」
そこにはそそり立つ大樹など影も形も無く、只々、なだらかな丘が広がっていた。
転じて私の心は、一気にささくれだってしまったが。まさきは真咲だったのだ、正輝などいなかった。
泣きそうだった。しかし、自制して出来るだけ思考を水平に保つ。魔女になるなどまっぴら御免だった。
「聞きたいことがあるんだけど、誤魔化さずに答えてくれ。」
震える声が問いを紡ぐ。それに対しキュウべぇは、かまわないよ、何でも聞くといい、と答えた。
「私は、何を願って契約したんだっけ。」
彼の無機質な瞳をじっと見詰めると、あっさりと答えが返ってくる。
「変なことを聞くね、まさき。君は、強い自分になりたい、と願って契約したんだよ、昨日のことなのにもう忘れたのかい?」
決定的な言葉が、私の脳へと突き刺さった。何て曖昧で愚かな願い事なのだろう。
この体の持ち主、本来のまさきは、とても些細でちっぽけな願いの為に、未来を溝へ捨てたのだ。
変に冷静だった思考は、もしかするとこの願いの所為か。しかし、それだけでは辻褄が合わない。
てっきり、まさきの願い事が私に干渉し、それ故に私はこの魔法少女の体に入っているのだと思っていた。
しかし、まったくこれっぽっちもそんなことは無く、まさきの願いは大したことのないものだった。
すると、この現状は何なのか皆目見当もつかなくなるのだ。まさか奇跡というわけではないだろうし。
まず一つ、まさきは強い自分を願ったが、何故か私がまさきになっている。
客観的に見て弱点だらけの私が、まさきの言う強い自分だなんてことは無いだろう。
それに、強い自分を願ったまさきが、私なんぞに体を乗っ取られている(乗っ取るつもりなどないが)現状は可笑しい。
私がこのまさきボディにとり憑いている経緯を無理やり筋道を立てて考えてみると、
一、まさきは強い自分を願って契約!
二、まさきの願いは並行世界の数多のまさきの内、もっとも強いまさき(私)を選んだ!
三、まさきに正輝をインストール、やったね、強いまさきになれたよ!
となる。高所恐怖症で足が臭い私が、全並行世界でもっとも強いまさきだなんて考えたくもない。
それに、世界の壁を貫いてまさきの願いが叶ったなんて、まさき既に十分強いだろ。よってこの考えは却下。
そうなると、私では完全に手詰まりとなるのだ。本を乱読しても、生来の頭の出来はどうともならない。
「まさき、君はいったい何を考えているんだい。先ほどから、君の行動は常軌を逸している。」
思考に耽っていると、宇宙人から地球人の常識を説か
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