突発的魔法少女
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と語弊があるが、そうとしか形容出来ない生き物がいた。
白い猫のような体躯に、ガラス玉を嵌め込んだような紅い目。耳からは長い毛のような物が伸び出ていて、総じて見ると不思議としか言えない風貌。
画面越しにしか見たことが無いそれは、名をインキュベーター、愛称をキュウべぇと言った。
「それとも聞こえてないのかい、魔法少女の肉体は不調とは無縁なはずなのだけど。」
彼(性別は分からないが)はそう言うと、私が四つ這いな所為で随分と細い足場をするすると通り、首を回さずとも見える正面へ来た。
いや、彼の動向などどうでもいいのだ、大事なのは彼の言った言葉の方。
「魔法少女、だって?」
「何故、不思議そうに僕を見るんだい?君は確かに僕と契約を交わし、魔法少女となった。忘れたわけじゃないだろう?」
どういうことか問い詰めたかった。テレビの向こう側ならいざ知らず、自分が魔法少女だなんてちゃんちゃら可笑しい。
というか私は男だ。一人称が私なのは若気の至りがずるずると大人になるまで続き、社会に出てからはそれが普通であったから。
文芸に精通した風を気取って、小説での一人称は男でも私が多いからと日常でそれを用いた所謂、黒歴史の所為。
いかん、思い出してはソウルジェムが濁る。というか、本当にあるのかソウルジェム。四つ這いな自分の手を見ると、そこには指輪があった。
もしや、これがソウルジェムなのだろうか。緑色、気取った言い方なら翡翠のような輝きを放つそれは、私の指にしっかりと通されていた。
しかも、左手の薬指。私は悪魔と婚約する気などさらさらない。接地面積を少しでも増やして安心しようとする手を引きはがし、指輪を抜き取る。
それを右手の指へと付け替えたところで、私は漸く満足に体が動かせるようになった。
といっても、恐怖が消えたわけではない。四つ這いのままで獣のように足場を進み、梯子へと向かう。
そんな私の後をついてくる白い悪魔。ジオンでなくとも忌々しいと感じるヤツは、軽やかに足音をたてている。
私が這這の体で梯子に足を掛けても、彼はそんな様を嘲笑うかのように鉄骨を行き来して素早く降りる。憎らしい。
結局、私が母なる大地に帰還する頃には、彼に対する恨みは燃え盛る火の如く巻き上がっていた。完全にお門違いな恨みだが。
ともあれ、漸く一息つける状態になった私は、早鐘を打つ心臓を抑えつつ、彼に聞きたいことを質問してみることにした。
「ええと、キュウべぇ……?」
「ん、何だい、まさき。」
質問を試みたら、疑問が増えた。まさき、とは、誰のことを指しているのか。
確かに、私の名はまさきだ。汐海正輝、次元連結システムとはまったく関わりの無いただのまさきである。
一方、魔法少女まさきを指す場合。まさきとは男の名前に見えるが、漢字を真咲、などにすると女の名
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