第三幕その八
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・・・・井戸の中です・・・・・・・・・」
震える指で窓の向こうを指し示した。スカルピアはそれに対し頷いた。
「スポレッタ」
素早く敬礼し部屋を出る。扉を出る瞬間彼は指で十字を切ったがそれは誰にも見えなかった。
やがて責め苦から解放されたカヴァラドゥッシが二人の警官に連れられ入って来た。頭から血を流し足取りはふらついている。しかし心はしかとしていた。
「何も言わなかっただろうね」
強い視線でトスカを見つめる。それに対しトスカは伏し目がちで言った。
「え、ええ・・・・・・」
その声は弱い。それを見てカヴァラドゥッシは大体の事を察した。
「井戸だ、行け!」
あえて二人によく聞こえるように命令を出した。警官達が一斉に動く。
「フローリア・・・・・・」
弱々しい。そこには怒りは無かった。哀しみだけがあった。
「御免なさい、私・・・・・・・・・」
それ以上は言えなかった。涙と嗚咽に埋もれてしまったからだ。
「いやいい、いいんだ」
責められなかった。この女は自分の為に、自分を苦しみから解き放つ為にしたのだ。そうまで自分を想ってくれる女をどうして責められようか。
(アンジェロッティ、生きていてくれ・・・・・・・・・)
今はもう願うしかなかった。友が逃げ延びてくれるのを願うばかりであった。
スポレッタが戻って来た。扉を閉めスカルピアに敬礼する。
「井戸はどうなっている?」
「はっ、途中に横穴があります。おそらくそこから逃亡したものかと」
「そうか。スキャルオーネとコロメッティに伝えよ。ここにいる警官の四分の三を連れて逃亡者を追え、とな。場合によってはその場で殺しても構わん」
「解かりました」
スポレッタは退室した。扉が閉められるのを確かめるとスカルピアは二人へ視線を移した。
「さて、と。次は・・・」
その時一人の警官が駆け込んで来た。
「何事だ、騒々しい」
肩で息をしている。よく見ればファルネーゼ宮に残してきた警官の一人だ。
「長官、一大事です」
「何だ?王妃からの御命令か?」
それはそれで厄介である。またあの公爵夫人が有る事無い事王妃の耳にいれたのだろうか。
「いえ、マレンゴの事です」
「勝ったではないか」
少し安堵した。またぞろ無理難題を押し付けられるのではないかと内心気にかけたのだ。
「敗戦です」
「あの小男が、どろう」
「いえ、我が軍がです」
「何っ!?」
「やったぞ!」
その報せにカヴァラドゥッシは飛び上がった。余りの喜びに我を忘れている。
「勝ったぞ、勝利だ。自由の旗がこのローマに再び立てられる日が来たのだ」
「くっ・・・・・・・・・」
スカルピアは悔しさで顔をしかめた。それを見てカヴァラドゥッシは続けた。
「苦しみを受けたがその後にこの様な
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