第六章
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ピッチャーは頷きそのうえで。
左バッターの一郎から見て逃げるシュートを投げた、そのキレは日本のプロ野球でも滅多に見られないものだった。
だが一郎はそのシュートを打った、それも。
「流し打ちか!」
「サードの頭上を越えたぞ!」
そしてだった。
ボールはレフトライン上に落ちた、レフトが必死に追うが。
一郎の足は速い、忽ちのうちに一塁を蹴って二塁に向かう。
レフトが必死にボールに追いつき二塁に送球するが間に合わなかった、一郎は無事に二塁を陥落させた。
堂々のツーベースだ、これに日本側は沸き立った。
「サヨナラのランナーだ!」
「得点圏だぞ!」
「これで兄貴が打てば勝てる!」
「サヨナラだ!」
皆このことに意気あがる、テレビやネットの向こうでもだった。
日本のファン達が熱狂的に叫んで書き込みもしていた。
「兄貴打て!」
「ここで打ってくれ!」
「それで決勝進出だ!」
「マウンドの恨み晴らしてくれよ!」
こう次々に書き込みとある巨大掲示板群のスレはサーバーの負担が心配になってきた。その熱狂の中で。
秀喜はバッターボックスに入った、球場の緊張が一気に最高にまで達した。
双方のファンもベンチも固唾を飲む、そしてベンチもまた。
どうなるかと待つ、その中でだった。
秀喜は二塁にいる一郎を見た、一郎も秀喜を見る、そうして。
目と目を合わせた、一瞬だったが確かにした。
そのうえでピッチャーの投球を待つ、今度のボールは。
バッテリーは秀喜がバッターボックスに入る前にマウンドでこんな話をしていた。
秀喜と一郎を見てだ、そして話をしたのだ。
「今度は兄貴だな」
「ああ、弟に続いてな」
「弟にさっきシュートを打たれたからな」
「兄貴にも打たれかねないな」
このことを危惧してだった。
それでだ、ピッチャーは自分から言った。
「シュートは止めた方がいいな」
「兄貴に打たれたら弟にもだからな」
「ああ、そう思うけれどどうだ?」
「だろうな、じゃあここはな」
「力で抑える」
ピッチャーは強い声で秀喜を見ながら言い切った。
「ストレートでな」
「それでいくか」
「シュートが危ないならな」
彼のその速球でだというのだ。実はそのスピードは一五四キロに達するのだ。
「それで倒してやるさ」
「ああ、ノーアウト二塁だ」
日本側に圧倒的な状況だ、油断は出来なかった。
それでだ、力でだというのだ。
「三振に取ってやるさ」
「そうして次のバッターもな」
「日本人共を三者三振に取ってやる」
こうキャッチャーに言った。
「だから任せてくれ」
「よし、それじゃあな」
秀喜を見ながらそうした話をした、そのうえでだった。
秀喜にストレートでの勝負を挑んだ
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