第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
兄弟対決
「弟には負けないよ」
「兄貴には負けないですから」
二人はそれぞれ言う、青島秀喜も青島一郎もだ。
日本シリーズを前にしてインタヴューの場で言っていた、二人共それぞれのリーグで活躍していた。
兄の秀喜はチームの四番サード、本塁打王と打点王だ。それに対して弟の一郎は首位打者に最多安打だ。
二人共バットだけでなく守備もいい、ゴールデングラブも獲得している。
「兄弟共だからな」
「普通そこまではないだろ」
兄弟のどちらかが凄くなってもだとだ、周囲も言う。
「兄弟一緒っていうのはな」
「しかもシリーズで対決か」
二人で言う。
「これはいい勝負だな」
「どんなシリーズになるかな」
ファン達はシリーズにおいてこの話ばかりしていた、それでなのだ。
秀喜も一郎も言うのだ、時には二人でインタヴューに出て。
「こいつは敵ですから」
「兄貴を倒しますよ」
「俺はずっとこいつを叩き潰したかったんですよ」
「乗り越えます」
二人は互いでも言い合う、そして不敵な笑みを浮かべ合う。野球というよりもプロレスの因縁の対決めいてもいた。
それでシリーズがはじまるとだった。
秀喜がホームランを打てば一郎が会心のタイムリーを放つ、秀喜がラインを抜けるボールを止めれば一郎は貫禄のバックホームだ。
二人はまさに激突していた、シリーズ全体で。
第一試合、第二試合でも活躍した二人は。
第三試合でもだった、ツーアウトランナー二塁三塁でバッターは秀喜だった。
点差は一点差で相手がリードしている、イニングは八回裏、まさに正念場だ。
右のバッターボックスに立つ秀喜は長打を狙っていた、その時に。
ライトにいる一郎を見た、顔は全く似てはいない。彼は父に似ていて一郎は母親に似ているのである。彼は右投げ右打ちだが一郎は左投げ左打ちだ。これもそれぞれ父と母の血である。その弟を見てだった。
次に相手の守備の配置を見た、右バッターだからかレフトにやや寄っている。
しかし一郎だけは定位置だ、その彼を見てだった。
「あいつだな」
右に打つことにした、それは何故かというと。
「見てろ、御前の頭上を超えてやる」
そして勝利を見せるつもりだった、そしてだった。
ピッチャーの投げるボールを打った、狙い通り右に打った、広角打法だ。
だがそのボールは詰まった、相手ピッチャーも愚かではない。
「くっ、しまった!」
しかしそれは充分長打だった、一郎の頭上を受けてフェンスの上に当たろうとする。
一郎はそのボールに向かう、だがそれは。
「これは無理だぞ」
「幾らなにでもな」
「この球場のフェンスは高いぞ」
「ホームランにならないだけましだぞ」
「幾ら追ってもな」
「
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ