第一章
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苦い愛
僕はその日喫茶店にいた、馴染みの古い趣の店だ。
ダークブラウンの英国風の趣だ、その店のカウンターで紅茶を飲むのが好きだ。
まずはカウンターに座りマスターにこう言った。
「ミルクティーを」
「はい、それですね」
「それをお願いします」
それを飲みそうしてだった。
カウンターで飲んでいた、すると。
何時の間にか少し疲れた感じの身なりのいい初老の紳士が来ていた、紳士はコーヒーを前にして無言で俯いていた。
僕はその紳士にふとだった、思いついて声をかけた。
「あの」
「はい」
紳士も僕に応えてきた。整っているが皺の多い顔だった。
髪の毛も白いものが多い、だがそれでもだった。
何処か満ち足りている、その顔で言ってきたのだ。
「何でしょうか」
「この店に来られることは」
「はじめてです」
紳士は僕に答えてくれた。
「気分転換に入りました」
「そうだったのですか」
「そうです、それでなのですが」
今度は紳士から僕に言ってきた、僕もその言葉を受ける。
「貴方は結婚はしておられますか」
「したいとは思っています」
僕は苦笑いを作って答えた。
「ですが」
「そうですか」
「中々相手が見付からなくて」
これは本当のことだ、今も独り身だ。
「今は」
「そうですか」
「いい相手がいてくれたらいいんですけれど」
僕は苦笑いを浮かべたまま言う。
「残念ですね」
「そうですね」
「それで貴方は」
今度は僕の番だと思った、それで紳士に問い返した。
「そうした人は」
「います」
その疲れきりながらも満足している顔で、紳士は答えてくれた。
「妻が」
「そうですか」
「いつも一緒です。幸いそれが出来る仕事ですので」
「お仕事は何ですか?」
「作家です。売れてはいないが二人で食べられるだけの収入はあります」
「そうですか」
「作品ですが」
小説だけでなく随筆やエッセイの作品もあった。色々書いている人だった。
このことを話してから紳士はまた話した。
「それで妻とは」
「いつもご一緒ですよね」
「そうです。今は家にいますが」
「専業主婦ですか、奥さんは」
「そうではないのです」
「?といいますと」
「まあそれはいいとしまして」
紳士はここで自分の言葉を打ち消した、そのうえで僕に今度はこう言ってきたのである。
「今書いている作品ですが」
「はい」
その話になった、そうした話をしてこの日は終わった。
それから数日店で紳士とは会わず僕も彼のことは忘れかけていた、だがその忘れかけていた中でふとだった。
店を出て散歩をしているとだった、、道の向かいにあの紳士が歩いていた。
紳士は一人ではな
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