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日本人に生まれた者の全ての仕事を保証する法案についての考察。あるいは追い詰められた人間の選択
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なるけどね」
「なぜお前はその上にいる誰かが私たちであると認められないんだ」
「その誰かがいたとして、お前につとまるとは到底思えないんでね」
二人はぴたりと言い争いを止める。まるで武道の型の演舞を見せられたようだ。うんざりするほど繰り返してきた発表会を終えたような。しかし、変化としては虚無感が増しただけにすぎない。二人の間に最善解が生まれない事を知っているのだ。
「さて、では整理しようか」
「君は、どちらについて行くんだ?」
「私と。国の為に罪を背負い。顔を変え、名前を変えて新たな人生を始めるか」
「僕と。国の為に罪を背負い。テロリストになってでも国を正しい方向に導くか」
俺は。どちらを信じる。犬か、狼か。
どちらが正しい。
落ち着け、整理するんだ。
「思えば、俺は変わらなければいけないのかもしれない」
「変わるだと。豚が心を入れ替えたところで、何ができる」
「そう。豚であることがいけないんだ。問題はそこにある」
「どういうことだい?」
「俺は犬についていくか、狼について行くかで迷っていた。どちらにも地獄が待っているのだろう。落とし穴もクソもない。道の先にはしゃあしゃあと死が吊るされている」
「今更なにができる。お前はもう、取り返しが付かないところまできている。後戻りは許されるはずはない。先に進むしかない」
「たとえ、その先に地獄しかなくても進むしかないんだ。ほかにできることがあるとすれば、ちょっとだけ立ち止まるくらい。しかし、あまり呆然としている暇はない。足場は今にもこぼれ落ちる」
「あぁ。その通り。だが、俺は立ち止まる気も、後戻りする気もない。俺は、俺の道を行く。それを信じる。たぶん、この先は崖になっている。後になって考えればバカなまねをしたものだと後悔することだろう。生きていればな。でも未来なんか無くてもかまわない。最後くらい、豚としてでなく、人間として死んでやる。自己主張をして死んでやる!」
「おもしろい。豚の分際でよく言った。では、その自己主張とやらを聞かせてみろ」
俺は深呼吸する。話をまとめる。ここから先は、誰も描いていない道筋。誰もが進むことを望まない混沌の道。
「二人は仲間なんだろう。国の犬役の方は、狼がテロリストである事を知っていたし、それに初対面にしては息が合っている。最後なんかは積極的に合わせているようだった。事件のきかっけになったのは、俺の端末に仕事が入ってきた事だった。偶然の出来事にしては都合がよすぎる。だから、二人はテロリストではなく、国の人間であることがわかる」
「どうした? 答え合わせなんかないぞ。続けろ」
「そして、全てをつなぐ鍵は、日本で生まれた全ての者に仕事を保証する法律。一般人でその法律に保護されている立場の俺にこんな事をする理由があるとすれば、実験だ。法律に賛成
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