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日本人に生まれた者の全ての仕事を保証する法案についての考察。あるいは追い詰められた人間の選択
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ようだな」
「その通り。だけどね。今回みたいなケースは別に珍しいものじゃないんだ。パズルに例えてみようか。君が関わっている事件を1ピースだとすれば、僕が追っている事件の全貌は数兆という数のピースで形成されている。なにせ、百年以上描かれ続けてる長大作だ。すでに、当初あったパズルのテーマなぞ消え失せて、腐りきり、取り返しのつかない事になっている」
「よく分からないな。俺の無罪は証明できるのだろう。ならば後はアンタとの取引じゃないか。俺の無罪を証明する代わりに、その事件とやらに関われと言っているのだろう?」
「根本的な話をしよう。僕が証拠を提示して、君の無罪を証明する。さて、このあと君は元の生活に戻れるとおもうかい? まず、ムリだね」
「な、なんだと。そんなはずはない。だって、罪がないんだぞ。誰が俺に手出しできる」
「言っただろう。お前の敵は国だ。そして、君と同じように冤罪を被るケースはごく日常的に行われている。君は殺されるぞ」
 心のどこかで、常識が崩れる音がした。そうか。俺は殺人の罪をなすりつけられたみたいな、利己的な理由で事件に巻き込まれたのではない。
 人が殺されたのに、罪を償う人間がいない。つじつまを合わせるために罪を償わされるのだ。無関係であるはずの、俺が。
 いや、無関係なんかではあり得ない。つまり、国はこの日のために俺を生かしておいたのだ。
 俺は養殖された豚のようだ。時期がきたら屠殺場に連れていかれて殺される。多少抵抗しようが無意味。作業員も国のためにと心を殺してなんとも思わない事だろう。
 罪をなすりつけられた後にも人生は続くのだろう。まるで、流れ作業で解体されていく家畜そのものだ。
 刑務所で働き、外に出て働き、やがて殺される。
 ぐるり、と世界が回転した。天井が俺をめがけて落ちてくる。
 あれ、ここは屋上?
 あぁ。地面だ。俺は倒れていたのか。
「おいおい。気持ちは分かるけどな。いつまでも寝てると本当に手遅れになるよ。僕は君を助けにきたって言ってるだろう。絶望するにはまだ早いぜ」
 体がだるい。しかし、動かせない程じゃない。
 まだ助かる。その言葉に導かれて俺は再びベンチに座った。
 想像上の俺はまだ豚の姿をしている。
 自暴自棄である自覚があった。もうロースからホルモンまでおいしくいただいちゃってくれ。
 だが、俺は豚と違って、幸か不幸か、すぐに死ぬわけではない。希望があるならば、せめてそっちに進みたい。
「アンタは俺にどうして欲しいんだ。無罪の先に未来がない事を説明した。つまり、有罪を認めた方がいいってことだろう。司法取引みたいに罪を認めれば罰は軽くしてやるとかそういうことなのか」
「確かに有罪を認めて罰を軽くする取引をする手もある。だが、。僕は警察ではないし、司法省の人間でもない。更に僕らの
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