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日本人に生まれた者の全ての仕事を保証する法案についての考察。あるいは追い詰められた人間の選択
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い。どうどうどう。だから落ちついて。もうこれで最後だからな。落ちつけ」
「ま、まさか。お前は警察か。警察もグルなのか?」
 ぱちん。と、神主が柏手を打つような大仰な動作で手を打つ。男の堂々とした動きを見入ってしまう。
「落ち着いたな。俺はお前を殺人事件から救いにきたんだ。当然、慈善事業じゃないが、警察でもない」
「た、助けてくれ。いったい俺はどうすればいいんだ?」
「ひとまず落ちつけよ。ひどい顔してる。コーヒーでも買ってきてやるからその間におちつけな」
 男が立ち上がるのを思わず止めそうになる。
 ずいぶん余裕がない。そう、この男が逃げ出す訳がないのだ。話は向こうから持ちかけてきたのだから。俺を不安にさせることで誰かが得するとは思えない。
 だから。落ち着け。話を整理するんだ。今必要なのはそれだ。
 男に目的があるはずだ。それはおそらく殺人なんかよりもずっと重い。無罪の証明をしてくれる代わりに、何か、とんでもないことを命令してくるに違いない。
 俺は自販機に向かう男を睨みつける。騙されるものか。
 もし、男の思惑が、俺にひどい罪を負わせようとするものなら、慎重にならなければ。一瞬でも隙を与えてはいけない。
 男がコーヒーを2本持って戻ってきた。
「ブラックでいい?」
 疑問符の付いた台詞だが、やはり俺の発言を待つようなことをしない。
 受け取った缶コーヒーをあけもせずに聞く。
「お前の目的はなんだ?」
「世界平和でないことは確かだな。むしろ真逆だと言っていい。僕には思想を持っていないから、革命とは違う。システムの破壊だとぐっと近づく」
 全くわけがわからない。自称ワルってやつか。
「抽象的すぎる。もっと具体的に、特に俺に何をやらせたいのかをはっきりさせてくれ」
 男は待て待てとまだ俺をなだめようとする。
「ちょっとは落ち着いたようだけど、具体的にどうするつもりなのか聞くのは僕が先だ。あんたはここから先どうしたいんだ?」
「どうするだって? それは今回の殺人事件をどう処理したいかって話だよな。決まってる。無罪にしたい。あんたに俺のアリバイを証明してもらえれば俺の件はかいけつするんだろ」
「よく考えて見ろ。本当にソレで終わると思うか?」
「ち、違うのか。待てよ。もしかして、アンタ俺の無罪を証明できないのか」
「いや。その辺にぬかりはない。お前は犯行が行われた時刻、偶然一般人にカメラ撮影されている。その写真は日記に使われるために撮られたもので、その場でインターネットにアップロードされている。写真の隅に小さくではあるが、鮮明に写っている」
 さすがに偶然撮影されたという言葉を鵜呑みにはできない。しかし、その話が本当だとすれば、肩の荷が降りる思いだ。
「用意周到だな。しかし、どうもアンタは事件が起こるのを知っていた
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