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ラ=トスカ
第三幕その三
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か思わせぶりな口調だったけれど」
「スカルピア!?」
 カヴァラドゥッシとアンジェロッティに雷が走った。その時外から多くの声がした。
「御主人様大変です。大勢の人が戸を叩いています」
 従僕の一人が駆け込んできた。
「やはり!」
 カヴァラドゥッシは外の者達が何なのか瞬時に理解した。そしてすぐに動いた。
「チェッコ、悪いが時間を稼いでくれ」
 チェッコと呼ばれた従僕はすぐに部屋を出て行った。
 次はアンジェロッティの方へ向き直った。すぐに友へ言った。
「追っ手だ、もう時間が無い。すぐに井戸を使って逃げてくれ」 
「判った」
 頷きすぐに服を手に取り窓へ向かった。
「元気でな」
 振り返らずにカヴァラドゥッシが言った。
「ああ、また会おう」
 そう言うとアンジェロッティは窓から消えた。風が入って来た。風に吹かれた窓は大きく開かれたがその反動で音を立てて閉じられた。
「そんな、私のせいで・・・・・・」
 トスカは顔を真っ青にしオロオロとしている。窓と扇をきょろきょろと見、手も身体もガタガタと震えている。
「心配する必要は無いよ、君は悪くない」
「けど・・・・・・・・・」 
 恋人の暖かい言葉にもトスカは震えている。
 扉が開かれる音がした。廊下をドスドスと大勢の者が大股で歩く音がする。そしてその音は次第に扉へと近付いて来る。
 扉が開かれた。警官達が入って来た。蝋燭の炎に照らされた黒い制服を見ただけでトスカは気を失いそうになった。
 警官達はトスカとカヴァラドゥッシを取り囲む様に部屋中に散った。トスカはカヴァラドゥッシの左腕にしがみつき必死に意識を保とうとしている。また廊下を歩く音が近付いて来た。そして岩山の様な男が部屋に入って来た。
 スカルピアだ。アッタヴァンティ侯爵を伴っている。後にスポレッタとコロメッティ、そしてスキャルオーネを引き連れている。蝋燭の炎がその顔を下から照らし出している。 
「こんな夜中に何の用だ?」
 カヴァラドゥッシがスカルピアに問うた。冷静かつ毅然とした態度を崩さない。

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