第二章
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留めておくのも政になる、それでだった。
「まさかと思いますが」
「それでしょうか」
「殿はうつけ殿などではありませぬし」
このことも知られてきていた、信長はうつけと評判だったが実は違うと言うことにだ。
それでだ、侍女達もひそひそと話をしたのだ。
「そうしたお考えから帰蝶様を尾張に留めておられるのでしょうか」
「だからこそですか」
「美濃を手に入れる為に」
侍女達もこう考えだしていた、何はともあれ帰蝶は尾張に残った。
やがて尾張に今川義元が駿河から攻めて来たが田楽狭間で破り三河で独立をした徳川家康と盟約を結び北近江の浅井長政に妹である市を嫁がせた、そして美濃の国人達も味方につけてからであった。
信長は美濃に攻め込み遂にこの国を手に入れた、そのうえで岐阜と名を変えさせた稲葉山城に入るとすぐにだった。
信長は帰蝶に笑顔でこう言ったのだった。
「行くぞ」
「行くとは」
「墓参りじゃ」
それに行くというのだ。
「わかったな」
「まさかと思いますが」
「その通りじゃ」
信長は笑顔のまま怪訝な顔の帰蝶に返す。
「ではよいな」
「わかりました、それでは」
帰蝶も信長の言葉に頷いた、そしてだった。
二人である場所に来た、そこはというと。
道三の墓だ、その墓の前に来てだった。
二人で参る、信長は帰蝶と共に道三の墓に手を当ててそれからこう言った。
「ずっとこうしたかったのじゃ」
「私と共ですか」
「うむ、わしのもう一人の親父殿の墓に参りたかったわ」
「だからだったのですか」
「わしは義父上に認めてもらったからな」
かつて道三が尾張に来た時に会っている、その時のことだ。
「だからずっとこうしたかったわ」
「父上は殿を文で始終褒めておられました」
「そうだったな」
「だからですか」
「御主はその義父上の娘じゃ」
帰蝶に微笑みを向けて言う。
「それならばじゃ」
「では私に暇を出さなかったのは」
「確かに御主が女房ならそれはそれで名分が出来る」
美濃を治めるそれがだというのだ。
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