第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「汚さでな」
「壮麗さや出費、犠牲の多さではなくですか」
「それで、ですか」
「何度も言うが用足しは人からはどうしても外せない」
もっと言えば生きている者ならばだ、このことはどうしてもだ。
「それならだ」
「人はそのことを言いますね」
「絶対に」
「そうなるかもな」
顔を顰めさせているのは目や鼻にくる汚物達によってだけではなかった、後世のことも考えてである。そのうえでだ。
実際に後世日本のある子供がベルサイユ宮殿について書かれた本を読んでから母親にこんなことを言った。
ベルサイユ宮殿の壮麗さが写真にもあった、だが子供が言うことは。
「ベルサイユ宮殿っておトイレなかったの」
「そうだったのよ」
「それじゃあおトイレどうしてたの?」
「お部屋や廊下の隅とかお庭でしてたのよ」
母は子供、自分の息子にこう語る。
「そうしていたのよ」
「それって凄く汚くない?」
子供は純粋に思ったことをそのまま返した。
「あちこちでおしっことかうんちとかしてたら」
「そうよ、だからベルサイユ宮殿って凄く汚くてね」
「臭かったんだね」
「そうなの。物凄く汚い場所だったのよ」
「僕そんなところいたくないよ」
子供は自分が母親と今一緒にいる部屋を見回してから言った。
「絶対にね」
「そうよね。誰もおしっこやうんちと一緒のお部屋やお庭にはいたくないわよね」
「何でこんなことになったのかな」
子供は首を捻ってこのことについても言った。
「訳がわからないよ」
「ベルサイユ宮殿に行きたいと思う?」
母親はトイレがなかった理由を話す前に子供にこのことを尋ねた。
「そう思う?」
「いいよ、そんな汚いところ」
子供は首を横に振ってこう答えた。
「絶対にね」
「そう思うのね」
「だって臭いしちょっと横いったらおしっことかうんち踏んじゃうから」
だからだと、子供は母親に言った。
「絶対に嫌だよ」
「そうよね、今はおトイレがちゃんとあるけれどね」
「それでも昔はそんなのだったから」
「行きたくないのね」
「絶対に嫌だよ、どんなに綺麗で大きくてもね」
これがこの子の言葉だった、そして。
今読んでいるその本を閉じてから母親にこう言った。
「僕今からお掃除するから」
「そうするのね」
「だって汚いの嫌だから」
だからだというのだ。
「それはね」
「そうよね、それじゃあね」
「今からするから」
こう言ってだった、そのうえで。
子供は掃除をはじめた、母親もここで自分も動いた。
「お母さんも?」
「お母さんも手伝ってくれるの?」
「お掃除は一人で出来ない時もあるから。それに」
「それに?」
「お掃除は一人でするものじゃないでしょ」
これは母親がいつも子供に言っているこ
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ