第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
華麗
フランスの財務大臣であるコルベールはこの時頭を抱えていた、そのうえで腹心の部下にこう漏らしていた。
「私としてはだね」
「はい、宮殿の建設はですね」
「反対だ。戦争もだがな」
この二つをだというのだ。
「本音からな」
「どちらもかなりの出費になっていますね」
「普通の宮殿でもかなりだが」
その頭を抱えた顔で言う。
「あの場所への建設はな」
「ベルサイユですね」
「あそこは水が悪い」
まずこれが問題だというのだ。
「砂地が多いんだ」
「森もありますが」
「それでもあそこはまともな水がない」
宮殿を置きそこに多くの人がいるまではというのだ。
「まずはそこからだよ」
「水ですね」
「水をベルサイユまで引くだけでも」
まずそれが多大な出費だった、財政的に。
「相当なものがかかったよ」
「はい、本当に」
「しかもだよ」
無論水だけに終わらなかった、さらにだ。
「それとね」
「犠牲者も多いよ」
「はい、かなりですね」
「困難な建設になっていますから」
「毎日車に一杯の死者を出す」
徴用した者達が事故で死ぬのだ、建設において事故は禁物だ。それが困難で大規模なものなら余計にである。
だからコルベールはこう言うのだ。
「頭が痛いね、私としては」
「ですが王のお考えですし」
「それを止めることは」
側近達も難しい顔で言った。
「無理です」
「王のご命令には逆らえません」
「その通りだよ、これは王のお考えだ」
それならばだった。
「止められない、私にはね」
「ではこのままですね」
「宮殿の造営を続けていくしかないですね」
「そうするしか」
「その通りだよ。予算はやり繰りしよう」
戦争と並行してだというのだ。
コルベールは頭を抱えながらも宮殿、ベルサイユ宮殿造営の為の予算を引き出していた。それはフランスの財政をかなり圧迫していた。
宮殿はその中で出来上がっていく、かなり巨大でしかも華麗な外観と内装である。
芸術家達がその才を如何なく発揮していた、そして。
国王ルイ十四世は出来上がっていく宮殿の中にもういた、その中でこう言ったのである。
「この宮殿は私が住むに相応しい」
「王がですね」
「住まわれるのにですね」
「そうだ、相応しい」
まさにだというのだ。
「これだけの宮殿に住まなくてはならない」
「フランス王ならばですか」
「フランスは今や欧州で最も偉大な国になった」
三十年戦争で神聖ローマ帝国、スペインを支配していたハプスブルク家を退けてからだ。フランスのブルボン家は欧州に覇を唱えていたのだ。
そのフランスの王だからだというのだ。
「その私が粗末な宮殿に住めるか」
「無理ですね」
「そう
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ