第七章
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「だから男子は一人ずつ家までエスコートしてくれよ。丁度数も同じだしな」
「その男子が狼になるってことは?」
「俺を含めてそういう奴いないよ」
黒ビキニの娘のくすりとした問いに明るい笑顔で返す。
「それじゃあな」
「ええ、それじゃあ私のエスコートは」
「俺がするさ」
「いつも通りね」
二人の関係がわかるやり取りもあった、そうした一幕もあり。
秋山は懐から十本以上はあるダンボールの籤を出して皆に言った。
「同じ数の相手とペアってことでな」
「今から引いてか」
「それで決めるのね」
「ああ、そうしてくれよ」
こう皆に告げてだった。他の面々が籤を引いた。
その結果純貴のエスコートの相手になったのは。
「お願いね」
「うん、それじゃあね」
俯く杏美に応じるのだった。
「今から加藤さんのお家までね」
「宜しくね」
「じゃあ後は各自な」
秋山がまた周りに話す。
「また言うけれど合コンは家に帰るまでだからな」
「それまでしっかりしろ」
「そういうことね」
「ああ、もうちょっとだけ楽しんでくれよ」
解散の場面でも明るい秋山だった、こうして。
それぞれの帰り道につく、その時に。
杏美は帰りの電車の中で隣に座っている純貴に声をかけた。顔は正面を向いて車窓の向こうを見ている。
「有り難うね」
「西瓜割りのこと?」
「ええ、そのことね」
「いや、それはさ」
「いいの?」
「西瓜割りだったら普通に言うじゃない」
声での案内、誘導をだというのだ。
「だからそれはね」
「いえ、実際に言う人はね」
「いないかな」
「少ないと思うわ」
だからだというのだ。
「本当に有り難う」
「大したことじゃないと思うけれど」
「けれど嬉しかったから」
だからだというのだ。
「有り難うね」
「うん、じゃあ」
「あと。今だけれど」
「今って?」
「私達二人でいるわよね」
今度言うのはこのことだった。
「これってデートよね」
「あっ、確かに」
言われて気付いた純貴だった。
「そうなるね」
「そうよね、私達って今はね」
「デートしてるんだね」
「秋山君合コンって言ってたけれど」
「あいつこういうの好きだからね」
ここで秋山に対して苦笑いになってあいつは、という感情を向けた。
「悪戯好きでそれでいてね」
「世話焼きで面倒見がよくて」
「変な奴だよ、全く」
「本当にね」
杏美もくすりと笑って言う。
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