第三幕その一
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邸の他にカラカラ浴場とシピオン廊の間に別邸を持っていたが実はもう一つ別邸を持っていたのだ。
ローマの外れにあるこの邸は泉と緑に深く覆われ外見は極めて質素である為教皇父子も全く知らなかったのだ。この邸は古くよりカヴァラドゥッシ家の秘密の隠れ家であり、それを知る者は家の者とごく限られた代々の使用人だけであった。従ってスカルピアも本邸と別邸は知っていてもこのもう一つの別邸までは知らなかったのである。
その燭台で照らされた一室にカヴァラドゥッシとアンジェロッティはいた。椅子に座り話をしている。
「ここならもう大丈夫だよ」
落ち着いた表情で笑みを浮かべて友人に言った。
「済まないね、何もかも」
アンジェロッティが申し訳無さそうに言うのをカヴァラドゥッシは手を振って打ち消した。
「何言ってるんだよ、小さい頃からの友達じゃないか、固い事は言いっこ無しだ」
「有り難う、けどよくこんな所に別邸を持っていたね」
「何、御先祖のちょっとした遺産さ」
「遺産?」
「そうなんだ。ここは元々僕よりかなり前の祖先ルイギ=カヴァラドゥッシの建てた別邸だったんだ。避難用のね」
「避難用?」
「そう。このローマはかって三度世界を支配しただろう」
「ああ、法とキリストと・・・・・・力によって」
「そう。そしてその三つにおいて世界から恨みを買った」
「だから実に色々とやって来てくれたな。その度に街を荒らしてくれた」
「そういう時の為に古い家だと秘密の隠れ家がある」
「その通り」
アンジェロッティはニッと笑った。何故なら彼もその隠れ家を使ってエマ=ハミルトンから隠れていたのだから。
「我が家ではこの家がそうなのさ。僕とこの家にいる二人の従僕、兄さん、そしてフローリア以外誰も知らない秘密の場所さ」
「だから途中で馬車から降りてわざわざ遠回りしてここまで来たんだね」
「そう、用心してね」
「などスカルピアの奴は目聡くて執念深いよ。ひょっとするとここまで来るかも知れないよ」
「大丈夫、もう一つ逃げ道がある」
アンジェロッティの危惧にカヴァラドゥッシは答えた。
「それは?」
アンジェロッティは思わず身を乗り出した。
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