第五話〜調練〜
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すよ』
この答えは宿題です
最後に耳に吐息と共にこの言葉を聞きとった周泰は首筋に衝撃を受け、意識を途絶えさせた。
『鬼ごと』が始まってから数刻と経たず、今だ空高くに陽が残っているうちに終了した。新兵の完全敗北を以て。
捕縛された新兵は全員調練場に連行されていた。
彼らの表情は青ざめており、受けた衝撃は計り知れないことを物語っていた。
多少なりとも腕に覚えがあって孫呉に仕官したにも関わらず、たった一人になすすべもなく鎮圧されたのだ。
当然と言えば当然だ。
「『鬼ごと』お疲れさまでした」
彼らの前に立つ江が不意に口を開いた。
「お分かりいただけましたか?己の身の程がいかほどのものかを」
この言葉を新兵は唇を固く結んで聞いている。
「はっきり言いましょう。あなた方は弱い」
きっぱりと言い切られ、否定をすることすら許されない。
それほどの差を新兵たちは感じていたのだ。
「今日がもし戦だったならば、私は本気で狩っていたでしょう。もちろんあなた方は間違いなく死んでいた」
厳然たる事実を次々に羅列され、すっかり打ちひしがれてしまう。
「調練とは言え武人たるもの、あそこまでの落ち目が見れば死んだことと同義。ならば…」
江は口角を吊り上げ、優しい口調で言った。
「一度死んだも同然の命、孫呉のために使いなさい。孫呉のために生きなさい」
言い終わってしばらくの間が開き、キョトンとした表情で新兵の面々は顔を上げる。
江はそんな彼らに笑みを投げかけた。
「正規兵の訓練は厳しいですよ?そのことを努々忘れないように」
「そ、それはつまり軍に入れるということか?」
「ええ、もちろん。というよりも元々既に入隊されている皆さんを解雇できるほど、私の身分は高くないですから」
徐盛の問いにも、江は笑顔で応える。
その答えを聞いて、場の空気が一気に弛緩する。
「ただ今回の調練で皆さんは気づいたはずです。心の内にあった驕り、そして相手を軽んずる態度、それらすべてが死に直結するということを」
江の声色を変えた言葉に応じて、また場の雰囲気が変わる。
安堵の雰囲気が流れていたその場にまた緊張感が漂い始める。
「次回は今日の調練を休んだあの愚か者を、引きずってでも連れてきますので、強者との戦いで心の驕りを切り捨ててもらいます」
新兵達は「応っ!」と力強くうなずく。
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