第五話〜調練〜
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使い物にならないとはいえ、それなりの人材が集まっていたのだ。江の実力を知るや否や、矜持を捨て去り、多人数での攻撃を仕掛けてきた。
その中には中心となる人物も見て取れた。少なくとも孫呉の軍に加わる程度の資格は十分に持ち合わせているだろう。
そんな新兵の中でも特筆すべきは、徐盛と残り一名のみ。恐らく最初に声をかけた少女だろう。前者は粗削りなところや短絡的なところがあるものの、その武勇に関しては戦力になりうる。磨けば、人材の少ない前曲に回すことが出来るだろう。そして自分が遊撃に回ることが出来る。
そして後者、これは情報収集を任せることが出来る。思春と協力されれば、ほとんどのところには潜り込めるだろう。
(そんな有望な人材が集まっているからこそ…)
江は浮かべていた笑みをフッと消し去る。
(ここで驕りを切り捨てさせてもらいましょう)
眼は獲物を見定めた鷹のように鋭くなった。
そして江は視線の感じる茂みの方へとゆっくりと歩を進めていった。
江が茂みに入り、しばらく歩いたところでふと足を止める。
彼は気付いていた。自分をずっと見つめている一対の視線に、そして気配を殺して追跡する存在に。
「さて。残りはあなた一人ですよ」
江はきさくに声をかける。自分からは『視認』出来ない相手に向かって。
対して、背後の木の上から様子をうかがう周泰は気が気ではなかった。
(間違いなく居場所が割れている…!)
これだけは理解できたからだ。見つめる対象の圧倒的な存在感がそう言っている。『お前の居場所は把握している』と。
どうして、なぜ、どうやって。疑問ばかりが自分の思考を掻き乱す。
隠密行動には絶対の自信があったのに!
『完全』に気配を『殺して』いるのに!
間違いなく向こうの視界には入っていないのに!
もはや彼女の精神状態は通常からは大きく逸脱していた。それゆえに気づくのが遅れてしまったのだ。
今までずっと見つめていた存在が周りの景色に溶け込むかのように消え去ったことに。
(………えっ?)
『いけませんよ。気を抜いてしまっては』
声が聞こえてきた。
紛うこと無き少年の声。しかし反響しているようで居場所を特定することはできない。そのことが、周泰をさらなる混乱状態へと追い込む。
『あなたは私の気配をつかめない。それに対して私は見ずとも、あなたの位置を把握できる。どうしてか分かりますか?』
悠長にも少年の声は問いを投げかけてくる。
もちろんその解を混乱状態の周泰に見出すことなどできるわけもない。
『分からないのなら、少しだけ助言を。「森羅万象全ては生きている」で
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