第五話〜調練〜
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』が始まる前の挑発的な物言いには反感を覚えた。しかし、彼は周泰の背後に無音で近づき、気取られることなく彼女の振るう直刀を素手で掴み止めたのだ。
それだけで実力という面では相応にあると判断していい。問題はその『相応』の程度を見誤ったことに尽きる。
(残りは私一人ですか)
茂みの中から気配を殺し、中庭の戦況を見つめていた周泰は残りが自分一人になったことを理解する。
そのことに焦りを感じながらも気持ちを強く持とうと奥歯を噛み締める。
(こんなところで負けていたら、この軍には到底入れない)
元々周泰は、劉表支配下の江陵近辺を本拠とする江賊だった。もちろんむやみやたらに人を襲うようなものではなく、むしろ義賊としての面が強かった。
自分の仲間を飢えさせないように、そして貧しい人々を助けるために国内で地位の高い人物が行う不正な取引などの現場を襲撃して生計を立てていた。
しかし、いかに義賊と言えども賊は賊。その行為はどこまで行っても略奪行為。助けられた人々以外にはその事実を許容されることはない。程なくして彼女の集団は、取引を邪魔された悪徳商人の手によって散り散りとなる。
仲間と引き離され、そして自分の生きがいを失った彼女はふらふらと放浪するうちに、とある噂を耳にする。
『江賊として名を馳せた甘興覇が孫堅に下った』と。
周泰は少なからず甘寧に親近感のようなものを覚えていた。江賊であり、かといって無駄な殺生も好まない甘寧の姿勢に対して好感を持っていた。
だからこそ気になったのだ。その甘寧が何故、今になって国に仕える気になったのだろうかと。
噂を聞いた彼女はもっと詳しい話を聞こうと長沙へと赴く。
そこで知った事実は彼女を驚愕させるに十分なものだった。
甘寧がこともあろうか孫堅の愛娘、孫権の副官を務めている。元賊を国の宝という存在のすぐそばに置くことの危険性は周泰にも理解できる。
甘寧の性格を鑑みれば、そのような不義理を起こすことはないとはいえ、思い切った判断には変わりない。
その事実から、周泰は孫呉の軍は自分という存在を正しく評価してくれるということに思い至った。ならば仕官しない手はない。
そう思い、意気込んでこの場にやってきたのだが…
(無防備に立っているはずのに、まるで隙が見当たらない)
目の前にとてつもなく大きい壁が立ちふさがっていた。
新兵も残り一人となったところで、江は一つ息をつく。
先ほどから視線を感じていた。察するに隠密行動に長けた者である。そのことに江は笑みを浮かべた。
(見誤っていましたね…今回の新兵は意外と豊作だ)
最初の印象だけでは判断できないということがよく分かった。
まだまだ到底
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