第五話〜調練〜
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の視線を送る。
「そのようなつもりはありませんよ。………ところで」
江はそこまで言って言葉を切る。
そしてその顔に浮かぶ笑みが冷たいものへと変貌して、続けた。
「私の得物はどこに行ったのでしょうか?」
そう言って両手を開いて、前に差し出す江。無論開けるというからにはその手には何も握られていない。
そのことに、頭に血が上った徐盛は反応が遅れてしまう。
「………はぁ…これで二度ですね」
次の瞬間、徐盛の脳天にまたもや軽い衝撃が与えられた。
別段気にすることのない衝撃。
しかし目の前に相手がいて、そして突然自分の上方から与えられた攻撃。いや、そもそもこれが攻撃なのだろうか。
カラン
衝撃から一瞬の時をおいて、乾いた音を立てて地面に木の枝が落ちる。
この瞬間徐盛は理解した。
これも目の前の少年による攻撃であると。
そして理解した瞬間、背筋を冷や汗が伝った。
もしこれが刃物だったら…
少なくとも今自分がこの世にはいないであろうことを理解した。
そしてようやく目の前の少年の正体が気になり始めた。
固より、新兵のうちの一人である少女の背後に無音で、誰にも気付かれずに移動したことからただの文官でないことは予想できた。
しかしその程度なら徐盛もすることが出来る自信がある。
「…お前は一体何者だ?文官とは到底思えない」
「文官ですよ。あくまでも分類上はね。………そしてあなたはそのたかが『文官』に無残にも打ち倒される哀れな『武人』とでも言っておきましょうか。」
(ということは…)
分類上ということは状況に応じて、戦働きをすることもあるということ。つまり「あの人」である可能性が高い。そう感じた徐盛は最後の疑問を投げかけようとする。
「貴殿は二年前に」
しかしその言葉を最後まで言い切ることはなかった。
「ガハッ……」
「戦いのさなかでのおしゃべりは自殺に等しい行為ですよ」
木の枝で腹部を一突き。
たかが木の枝如きでこんなに有効打を与えられることに、意識の薄れゆく徐盛は場違いながら感嘆の念を感じた。
力無くその身は調練場の土の上に横たわる。
「私に負けたことは恥じることではありません。あるとすれば戦いに臨む心構え。此度は敗北を受け入れ、精進しなさい」
江は意識が遠のいていく徐盛にそう声を投げかけ、ゆっくりと他の者が散っていった方へと去っていった。
その場に残されているのは徐盛のみ。
(やはりそうか)
もう定かではない意識で思考を続ける。
(や
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