第五話〜調練〜
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「やれやれ、こっぴどくやられたようだな」
「仕方がありません。江様が最善と考えた事なのですから」
と、そこに歩み寄ってきたのは一組の主従だ。
具体的に言えば、蓮華と思春である。二人は宮城内からずっと一部始終を見ていた。故に思春は、敬愛する江への罵倒のせいか機嫌がすこぶる悪いように思える。さて突然現れた大物に対して、新兵はどう反応をするだろうか。
「そそそそそそそ孫権様!?何故このようなところに!?」
「ありゃ甘寧様じゃねぇか!何だって新兵の訓練なんか見に来てんだぁ!?」
動揺するのみである。孫家の一族は当然統治者として、民草にその姿を見せることが多い。よって新兵たちは皆、見慣れた、しかし貴く遠い存在を前に動揺するほかないのである。
「おや、蓮華に思春ではありませんか。どうしたのですか?」
ここでまた動揺することとなる。
目の前の年端もいかぬ少年が、孫家の令嬢とその側近を相手に何とも気軽に声をかけているのだ。
「どうした、ではない。あれだけ派手にやっていたのだから気になるに決まっているだろう。張昭が溜息まじりに言っていたぞ。朱家の倅がまた何か仕出かしたのではないかとな」
「私は江様に対する罵声が耳に入り………それについて詳しく聞かせてもらおうかと」
思春はそう言うと、新兵たちのほうをキッと睨みつける。
以前は江賊として、今は孫呉の武将として名を馳せる鈴の甘寧に睨まれて平静でいられるわけがない。無意識のうちに体が思わず震え上がってしまう。
「あ、あの……」
「ん、どうかしたか?名は……周泰と言ったか?」
「は、はい」
恐る恐るではあるが、この状況で手を挙げ、質問をしようとする胆力は並大抵のものではない…などと見当外れにも程がある思考を、江がしているのはまた別の話である。
「恐れながらお聞きしたいのですが、孫権様・甘寧様と親しくしているこの方はどなたなのですか?調練では名乗らず、自分のことを一文官としか…」
それを聞くや、蓮華の表情が変わる。具体的に言えば良くない方向へ。
「江、お前はまた遊んだな?」
「ちょっとしたお茶目ではないですか。それに名前の知らない文官だからと言って相手を侮るようでは、まだまだ下の下。ここらでしつけてあげるのも上司の責任でしょう」
「………そう…もういいわ…」
悪びれない江にがっくりと肩を落とす蓮華は、一息つくと、また先ほどまでのように背筋をぴんと伸ばし、新兵たちへと向き直る。そして江の方を指さし、言った。
「この者は朱才だ。………これだけ言えばもう分かるだろう」
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