第五話〜調練〜
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人という生き物は慣れる生き物だ。例えそれがどれだけ特異なことであっても、日々続けていれば、いずれはそれが当たり前のようになってしまうのだ。要するに慣れというものは恐ろしいということである。
良く仕事の出来る者に対して仕事を多く回されるのは当たり前だが、それでも全体の二割を押し付けるのは常軌を逸していよう。そしてそれに対して最初は抵抗があったものの、今では全く気にもかけないのだから恐ろしい。
「新兵の調練ですか」
孫呉の本拠地・長沙城内。
それは2人の副官を得てから一月もしないうちのことだった。
今まで日常だった竹簡の山対江との格闘に、2人の少女の姿を加えた光景はもはや日常と化していた。
ちなみに夕と穏が副官になってからというもの、遠慮というものがなくなったのか、桃蓮は今まで以上に江に対して仕事を回していた。…もともと遠慮があったのかといえば、それはそれで甚だ疑問だが…
ちなみにその仕事内容は雪蓮のものが大半であり、今回の調練も雪蓮がサボったが故に回された仕事であった。
「………孫家の我儘姫には勘弁してほしい」
江の近くに配置された机に着いていた夕は、副官になった当時の表情そのままでそうぼやいた。
………否、若干(眼の下にクマが出来る程度には)やつれているように見受けられる。一方、もう一人の副官である穏はというと…
「それはそれでいいじゃないですか〜。新兵が江様の調練を受けたらすぐにでも実戦投入できますし」
意外と元気だったりする。
何はともあれ、2人とも今の生活になじみ始めていることは確かであった。無論こうなるまでにはそれなりの紆余曲折を経てはいるのだが…
それは余談になるのでまたの機会に綴るとしよう。
「まぁ、雪蓮の自由人気質は今に始まったことではないですからね…大人しく仕事を受けましょうか」
ここで文句を言わずに引き受けてしまうあたり、江には苦労人の才能が多分にあるのは間違いないだろう。
江は2人に政務を任せ、調練場に向かうべく政務室から出た。
「何ゆえ、このように天気の良い日に仕事しなくてはいけないのでしょうか…」
江は人知れずボヤく。とは言え年中無休全天候型の江にとって天候などさしたる問題には成り得ないのだが。
「いつか雪蓮に仕事を押し付けて、ゆったりと一日を過ごしてみたいものです」
しかしそんな日は永久に訪れない。
江の仕事が雪蓮に回った日には全てを勘で、さらに細かい内容は度外視されて済まされてしまう。
多額の金や大量の兵糧を動かす繊細な仕事なだけに雪蓮には向かない。
故に江が馬車馬のように働くしかないのだ。
と独りごちているうちに江は調練場に着いた。そこに
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