第六章
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「いや、思いも寄らなかったね」
「全くだよ」
「チェ=ゲバラは英雄じゃなくてね」
「一人の男か」
「それに過ぎなかったなんてね」
「けれどあれだね」
ここでだ、モリがその甘いカクテルを飲みながら笑顔で話した。
「それが彼に相応しいね」
「ゲバラにだね」
「そうだっていうんだね」
「うん、そう思うよ」
こう言うのだった、同僚達に対して。
「キューバはその一人の男がいるんだね」
「英雄ではなくて」
「そしてその一人の男がこの世界にいる」
「ロマンだね」
勇ましく頼もしい、そうしたヒロイックなロマンだった。
そのロマンをこの目で見た、彼等はそのことに満足しつつこうも言った。
「ゲバラがいること、忘れられないね」
「うん、これからもね」
こう話すのだった、彼等は共産主義すら超えているものをゲバラに見た。そこには人としての格好よさがあった。
チェ=ゲバラは自分自身を英雄だとは決して言わなかった。後に中南米の革命を主導しようとして敵に捕まり銃殺となる。しかしその時も彼は自分自身を一人の男といい遠慮なく撃ち殺せとさえ言った。
彼は最後の最後まで英雄とは言わなかった、英雄とは自分自身で言ってなるものではないという。では彼は英雄だったのだろうか、しかし周りは彼を英雄と呼ぶ。英雄とは周りがそう呼ぶことによってなるということであろうか、少なくとも彼にロマンを感じる人は今も多い。ヒロイズム的なロマンを。
一人の男 完
2013・4・22
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