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ラ=トスカ
第二幕その七
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を持つイタリア人ならではの存在と言えよう。
 もっともイタリアだけでなく当時の欧州の貴族社会は何処も似たり寄ったりだった。むしろ見方を変えれば愛人が主流であった国も多いのでイタリア人から見ればそちらの方がけしからん事だったかも知れない。ロシアのエリザベータ女帝もエカテリーナ二世も男性遍歴の激しさで有名であったしイギリスのチャールズ一世は稀代の女たらしであった。何しろイギリスはヘンリー八世の女性問題でローマ=カトリック教会と袂を分かった国でもある。処女王と言われその冷徹さと鋭利な頭脳で知られたエリザベス一世も幾人か愛人がいた事が確認されている。
 この点において特に有名なのがフランスであろう。どうもこの国の国王は代々女好きの国王ばかり出てくる。フランソワ一世、アンリ三世、アンリ四世と次から次にとカサノバの向こうを張る色事師が登場する。アンリ三世に至っては自分の身辺を着飾った美男の剣客達で固めていたのだからその道の人物まで揃えていた。それでも彼等はルイ十四世、ルイ十五世の二人程ではなかったが。この二人によってどれだけの花が折られてしまった事であろうか。フランスの夜が長いのも考えものである。
 こういった状況だからおしどり夫婦として有名だったマリア=カロリーネの両親マリア=テレジアとフランツ=シュテファン=フォン=ロートリンゲンは特筆に値する。ただし中々の美男子であり人柄も良かった神聖ローマ帝国皇帝の夫には言い寄って来る女性が結構いた様である。浮気の虫が起きる前にいつも夫に気付かれぬように妨げていたので何事も無かったが。
 マリア=テレジアは男女関係、女性の誇りについてとかく口やかましい人物であり夫婦や親子の愛が何よりも好きだった。これは女性を蔑視してやまない宿敵プロイセン王への対抗意識も含まれていた。もっともこのプロイセン王は生涯独身でありサン=スーシーで哲学書を読んだりコーヒーを飲みながら青年士官達と談笑するのを無上の喜びとするこの時代屈指の変人であったが。
 勿論アッタヴァンティ侯爵にも情友はいる。彼なりに楽しんでいる。妻に情友がいるからと騒ぐつもりは毛頭無い。むしろ情友が自分も知っている気心の知れた人物だったので安心している程である。

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