第二幕その六
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いたという。それを使おう。それに・・・)
先程の歌を唄った時のトスカの姿が思い出された。トスカに対し邪な欲望が首をもたげはじめていた。
(あの男が消えればわしのものに出来るかも知れぬ。獲物が多くなるかもな)
顔がドス黒くなる。鉄仮面の様に表情に乏しい顔だがそれが変色していく。
(だがどうするかだ。待てよ)
手にする扇に気付いた。そしてある劇を思い出した。
(この前見た『オセロー』とかいうイギリスの劇でイヤーゴという男はハンカチを使って事を運んでいたな。それではわしは扇を使うとするか)
再びトスカに目をやる。何も知らずに楽しくお喋りに興じている。
(あの女が嫉妬深ければおそらく一直線にカヴァラドゥッシの下へ行くだろう。嫉妬に狂った女鷹に比べれば警官なぞものの数ではないわ)
笑みを仮面の下に隠しながらトスカに近付いていく。スカルピアを見て淑女達は潮の様に引いていく。
手を取った。あえてわざとらしく親しそうに言った。
「トスカさん、貴女のこの美しい手に冷たい手錠を架けるのも、あのサン=タンジェロ城へ送るのも全て私の一存でどうとでもなるという事を御存知ですかな」
露骨に脅しをかける。普段は陰に陽に仕掛けるがあえて露骨に仕掛けた。その言葉を聞いた者は思わず顔を顰めた。スカルピアはこういった言葉を出す時必ず罠を張っているからだ。そして当のスカルピアは周りの視線を無視した。
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