第五章
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かった、アラサー二人の旅行だったけれどそれでもだった。
私は満足している顔で彼女に言った。
「また一緒にっていうのはね」
「それも寂しいわね」
「旅行はやっぱり旦那か彼氏と行くものよね」
「そうそう」
彼女も言う。
「そうしないとね」
「私来年は絶対に彼氏と一緒に行くから」
「私もよ。それで上手くいったら」
その時はと彼女は私に意気込んで言ってきた。
「結婚よ、結婚」
「それよね、やっぱり」
「そう、行くから」
「そうね。今度は別々でね」
「行きましょう」
こう二人で話したその時にだ。不意に。
風が来た、さっと私達の中を通り過ぎていった。
不意に来た南風だった。けれどその風を確かに感じ取って。
私は何か目が覚めたみたいに彼女にこんなことを言った。
「今の風って」
「どうかしたの?」
「いい匂いがしたわね」
「ううん、南国の?」
「ええ。何か今の風をまた浴びたいって思ったから」
だからだと彼女に顔を向けて言った。
「来年も今の時期にここに来たいわ」
「そうね。私もね」
「ただ。今度の相手はね」
「それは私もよ」
私に顔を向けて笑顔で言ってきた。
「ちゃんと相手をゲットして行くから」
「お互いにそうしようね」
「絶対にね」
私達は自然にお互いの手を出して小指と小指を絡ませた、そうして約束もした。
約束をしてそれからだった。私達は今回の旅行の最後の時を楽しく過ごした、そして。
私達は一緒に行ってそうして神戸に戻った。来年は確かな相手と一緒に行くと決意して。
そして今私は沖縄にいる。けれどその相手は。
「来年こそはね」
「私もよ」
苦笑いで空港を出た、そして今年も二人で沖縄を楽しむことになった、そんな私達を今年も南風は優しく迎えてはくれた。
サザンウィンド 完
2012・11・4
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