第二幕その五
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した。シャンパンが次々と栓を放たれ乾杯の声が木霊する。
王妃は賑やかな宴の中に入った。そしてトスカとパイジェッロの前に来た。
「あ、王妃様」
二人は王妃に跪き手の甲に接吻をした。王妃は二人を立たせると優雅な笑みを浮かべてトスカに問うた。
「フローリア、喉の調子はどうですか」
「はい王妃様、今宵は王妃様に満足して頂けると存じます」
「それは何より。楽しみにしていますよ」
「はい、有り難うございます」
「それにしてもパイジェッロはそなたに謝らなければならない事が一つ有る様に思えるのだけど」
「えっ?」
トスカは解らなかったがパイジェッロはギクリとした。パイジェッロがナポレオンに招かれてパリに行き、彼の為に作曲した事を皮肉っているのだ。
「陛下、この者は罪有りとはいえ悔悟の情有りと見受けられますが」
スカルピアが口を挟んできた。
「おやこれは男爵」
皮肉な陰を込めた笑みを浮かべてスカルピアに顔を向けた。
「他人の事よりもアンジェロッティを逃がした此度の事件がそなたの不幸にならなければ良いのですが。そなたは敵が多いようですから」
「申し上げますが陛下と同じ敵かと存じます」
スカルピアも流石だ。負けてはいない。だが王妃も引かない。
「それに彼の者の妹は美しく、裕福ですし。まあこれはどの者も知っている事だけど」
好色で袖の下に弱いと言われるスカルピアに対し暗に当てつける。だがスカルピアも伊達に今の地位まで来たわけではない。
「陛下は私に何か後ろめたい事があるとでも言われるのですか」
怯まない。とそこへ従者が王妃に演奏の準備が出来た事を知らせに来た。
「そうですか、解かりました。フローリア、準備はよろしいですか?」
「はい」
王妃に会釈し演奏の場へと向かった。そこに置かれている台に登った。パイジェッロが指揮棒を手に取り曲が始まった。
高く澄んでいてそのうえ美しい声である。幾十もの色彩りのの宝玉を転がす様に歌われたかと思えば小河の清らかなせせらぎの様に、そして庭園に咲き誇る紅の薔薇の様に、激しく赤い血潮の様に、それから一変して夜の冷たく澄んだ森の中の湖に映る白銀の満月の様に、次々と色彩りを買え歌われるその歌はその場にいた全ての者を魅了した。その歌声と技量に誰もが言葉を失った。
「・・・・・・・・・」
歌うトスカの姿も美しかった。その場に応じその美しさを変え時に楚々と、時に激しく、時に祈り深く、時には艶やかだった。これがトスカの魅力の一つでもあった。歌だけでなくその美貌でもイタリアに知られていたのだ。
スカルピアもその一人だった。だが彼は他の者とは異なる感情を抱き始めた。この女を自分のものにしたいと考えた。どの様な手段を使ってでも奪ってやりたいと思った。
カンタータは終わった。広間からは割
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