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ラ=トスカ
第二幕その四
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になりますな」
 スカルピアはトスカに釘を刺した。同時に一貫してトスカの顔を見ていたが結論が出た。白だった。またもや心の中で舌打ちする事となった。
 周りを見回す。誰もスカルピアと顔を合わせようとはしない。情報も集まりそうにはない。渋い顔をした。その時だった。王妃の到着を伝える声がした。
 それまで広間中に散らばり談笑し酒や料理を楽しみ賭け事に興じていた一同が左右に整列した。今までカンタータを鳴らしていた樂者達は国歌を演奏していた。
 大勢の従者達を従え王妃マリア=カロリーネが入って来た。豪奢な絹の白いドレスに身を包み手には王妃を表す杖が、そして頭には冠が被せられている。ブロンドのやや巻いた髪、青く強い光を放つ瞳、整った細い顔立ちに大きな特徴が幾つか見られる。
 鷲の様な鼻、厚い唇、やや出た下顎、それ等の特徴が彼女の出自を表わしていた。
 ハプスブルグ=ロートリンゲン家、神聖ローマ帝国皇帝として欧州全土にその権勢を誇示する欧州きっての名門である。
 かつてはスイスの一地方貴族に過ぎなかった。だがこの家のある者が神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ一世として即位するとその地位は一変した。以後婚姻政策を中心とした積極的な外交政策によりその勢力を拡大していく。
 ウィーンを本拠地としてオーストリア、ドイツはもとよりハンガリー、チェコ、スペイン、ベルギーそしてイタリアへとその勢力は拡がっていった。先に出たカール五世もハプスグルグ家出身である。彼だけでなく『忠誠最後の騎士』と謳われたマクシミリアン一世、スペインの絶対君主として君臨し『日の沈まぬ国の王』と称されたフェリペ二世もこの家の者であった。ハプスブルグ家の力と血は欧州を長きに渡って支配していた。教会が心ならばハプスブルグ家は背骨である、とある歴史家が書いた様に。

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