第二幕その一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第二幕その一
第二幕 ファルネーゼ宮殿
ローマには多くの歴史的建造物がある。コロシアムの様に帝政ローマの頃からあるもの、サン=ピエトロ寺院の様にルネサンス期に建てられたもの等時代も建築様式も多岐に渡っている。
ファルネーゼ宮は後者に当たる。時の枢機卿アレッサンドロ=ファルネーゼによって建てられた為その名が冠せられた。
後に法皇となりパウロ三世となるこの枢機卿は神に仕える身ではあったが神に仕えてはなかった。彼は元々宗教に関心を持たぬ所謂ルネサンス的人物であり、最大の関心は地位と権力、富、そして美女であった。ルネサンスの時代だけでなく何時の時代でも何処の場所でもこうした人物はいるものであるが群雄割拠の状況であり聖俗の権力がアラベスクの如く複雑に絡み合ったこの時代のイタリアにおいてはこうした人物が目立っただけである。
『右手に奸智、左手に謀略』と揶揄されたアレッサンドロ六世とその長子チェーザレ=ボルジアはあまりにも有名であるが彼等ボルジア家の政敵ローヴェレ枢機卿もそうであるしあの富豪メディチ家もローマ=カトリック教会と深い繋がりを持ちその栄華を誇っていた。そういった時代であった。
パウロ三世も先のアレッサンドロ六世と同じく法皇という名の第一級の政治家でありこのままだと贅を極めた君主としてのみ後世に名を残していたであろう。だがこの時北の平野にある人物が出て来た。
その者の名はマルティン=ルター。大食漢で大酒飲みで世話好きで子煩悩であったが同時に極めて清廉潔白な宗教観の持ち主であった。彼が教会の世俗化と腐敗に対し異議を唱えたのである。
ローマはすぐに彼に破門を言い渡したがその程度で引っ込む男ではなかった。過激な発言と行動を繰り返し何時しか神聖ローマ帝国全土を巻き込む大騒動となった。
混乱はローマにも飛び火した。それは大火事となった。神聖ローマ帝国軍とルター派新教徒、そして教皇軍がローマで衝突したのである。世に言う『サッコ=ディ=ローマ』である。
帝国軍と新教徒達はローマ中で暴れ回った。所々で略奪と虐殺という名の血の宴を開き建物は破壊され火が点けられた。聖アンドレの聖骨は地面に投げ付けられ聖ヨハネの聖骨は蹴球にされた。数万の市民が殺されティベレ川へ投げ棄てられ路という路は堆く積み上げられた屍で埋められた。人の首や手が宙に飛び交い血が汚物と混ざり街を彩った。ローマは死の街となった。パウロ三世は枢機卿の時にこの混乱に巻き込まれ命からがらサン=タンジェロ城に逃げ込んだのである。
そうした経緯から彼は新教徒達を激しく憎むようになった。法皇に即位すると先頭に立って宗教戦争を繰り広げ異端取締の為『聖丁』を設けイグナティウス=ロヨラやフランシスコ=ザビエル等ルターに勝るとも劣らぬ過激な修道僧達が作った
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ