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ラ=トスカ
第二幕その一
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『イエズス会』を修道会として認知し厳格なカトリックの教義を広めさせた。さらにトレントで公会議を開きローマ=カトリック教会の権威を取り戻した。彼のこうした行動により旧教徒と新教徒の憎悪と殺戮、異端審問による陰惨な魔女狩りが欧州全土を覆ったとも言える。
 この様な人物であるから歴史において彼の評判はすこぶる悪い。だが芸術においてはその評価は高い。
 ミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の大祭壇画『最後の審判』を描かせ、またサン=ピエトロ寺院の大ドームを完成させた。
ファルネーゼ宮もそうした彼の芸術における業績の一つである。反宗教改革の盟主である彼の強固な意志と贅と美を好む気性を反映しこの宮殿は他に多々建てられているローマの建造物のどれにもひけを取らない威風堂々たる建造物であった。広い中庭を持つというローマ建築の主流であるローマ様式の建物であり、その中庭を多くの部屋が取り囲み、各部屋には中庭に向かってロジックという独特の涼みの為の廊下が付けられている。大広間は上の階にありバルコニーと繋がっている。宮殿の正面はエジプトから取り寄せた花崗岩で造られた噴水が二つ置かれている。この二つの噴水のみならず宮殿全体はアントニオ=ダ=サン=ガロの設計によるものであるが彼がこの世を去るとミケランジェロが後を継いだ。彼は宮殿の上階を担当し、軒蛇腹と中庭側の正面の三層は彼が担当した。ミケランジェロが没すると彼の後継者ジャコモ=デラ=ポルタが師の仕事を引き継ぎ完成させた。この時ファルネーゼはこの世にいなかった。
 正門の入口は馬に乗ったまま入られる事からも解かるようにかなり大きい。大きいだけではない。豪華であり壮麗である。その威容はローマのどの建築物にも比肩し得る。後の人はこう評した。
「アレッサンドロ=ファルネーゼはローマで最も美しいものを三つも持っている。???一つはイエズス会のジェズ教会、一つは彼が神から授けられた一人娘、そして彼の一族の宮殿であるファルネーゼ宮殿」
 残念な事にファルネーゼの娘を見た者はローマにはもういない。 だがジェズ教会とこのファルネーゼ宮殿はローマの誰もが見ている。そしてその美しさを知っている。宮殿の大広間は多くの燭台で照らし出されている。その中を着飾った者達がいる。バルコニーの下にも灯火が輝き明るい広場をローマの市民達が埋めている。広間の中には演奏台や大姿見、テーブル、そひて玉座が置かれている。テーブルでトランプに興じている者達がいる。


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